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律姫 -ritsuki-
律姫 -ritsuki-
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2008年3月14日
この日は運命の日・・・というか落とし穴に落ち始めた日というか・・。

でも、そもそもの始まりは1ヶ月前だったのかもしれない。
その日は2月14日、バレンタイン。

その日、俺はまあこれといった収穫も無く・・・購買で買った苦し紛れのチョコ菓子を同じような境遇のやつらと食べながら放課後しゃべっていた。
「ったくみんな製菓業界に踊らされやがって」
「言うな。負け惜しみにしか聞こえないって」
「変なギリチョコなんかよりも、俺は俺のことを思ってくれる一人の子がチョコをくれればそれで満足なんだ」
「・・・いつか現れてくれるといいな、そんな子」

4人全員でため息をつく。

「帰るか・・・」
「だな。校門のところに俺の出待ちの女の子とかいないかなあ」
「漫画の中と現実を混同するな」
そんな話をしながら荷物を片付け始める。
「こんな潤いの無い生活してるとたまに梛(ナギ)でもいいかなーと思う自分が怖い」
そんな言葉とともに、後ろから抱きつかれる。いくら仲のいいやつの言葉でも・・・それはちょっと聞き捨てならないぞ。
「待て。おかしいだろっ」
俺のそんな言葉は無視されて、他の3人は楽しそうに会話を続けた。
「その気持ちはわかるなあ。かわいければもうこの際男でもかまわないかも・・・」
「つやのある黒髪に白い肌。ちょっと気の強いけど、身長がないから子犬みたいにみえるよなあ・・・抱き心地もいいし」
後ろから手を回されて肩の上に相手の体重が乗ってくる。
「だから・・・いくら今日何も収穫がなかったからって血迷うなー!」

そう叫んだ瞬間に、ガラッと扉が開いた。
入ってきたのはクラスメイトの綾隼人。ちなみに苗字は『綾』のみ。
すっごい美人だって有名だけど、クラスの誰とも話そうともしなし、仲良くなろうとしてない奴だから普段はあまり意識しない。
でもこんなときにバッタリ教室で会ってしまうと時間が止まったような、そんな気まずい感覚がする。
抱きついてきていた奴もぱっと離れる。

でも綾はそんなこと気にした風も無く、すたすたと自分の席に行った。

「あー、帰ろうぜ」
一人がそう言うとみんなはそそくさと教室を出て行った。
でも、なんかけんかしてるわけでもないのにこういうのって、良くないと思うんだよな。
いくら気まずい空気になったからっていって出て行くなんて余計気まずくなるだけだ。
クラスメイトなんだから、一声くらいかけていくべきだよな・・・。

「えっと、綾、こんな時間まで何してたんだよ?」
「散歩」
・・・は?校内の散歩?
「なんか、すごいんだな・・・やってること違うっていうか・・・」
「放課後はいろんなこと見れてたのしいよ」
そうですか・・・としか言えない。
綾が楽しいと思うことなんて想像できないし。

ああっ、沈黙だ、やばい。
なんとか会話をつながなければ。
―――そう思ったときに目に入ったのがさっきまで4人で食べてたお菓子。
「あっ。綾、よかったら一個食べないか?余っちゃって」
クッキーにチョコレートがコーティングされたおなじみのもの。
「もらっとく」
綾が1つ指でつまみあげて、口に運んだ。
「旨いだろ?最近の俺のお気に入り。良かったら今度買ってみろよ」
「うん、甘いものは好きじゃないけど美味しい気がする」
・・・・ん?
なんだ、甘いものが好きじゃないって・・え、ってことはなんで食ったんだよ。
俺への気遣いか?
でも美味しいって言ってるしな・・。

あー、もう言葉の裏読むのとかって苦手なんだよ!

「甘いもの嫌いだったんならごめんな、気使わせちゃって」
とりあえずこう言っておけば当たり障り無いだろ。
「いや、美味しかったよ」
「そうか?それならいいけど・・・」
やっぱりわけわかんねえ・・・。
「どうもありがとう」

そういいながら、奴は微笑んだ。
もともと美人だとは思っていたけど・・・微笑まれたのは初めてだ。
うわ・・・なんか、ヤバイかも・・・。

「伊藤君?どうかした?」
「・・いや、綾って・・・なんか・・・」
「なに?」
「いやっ、なんでもないっ。俺のことは梛でいいぜ、皆そう呼んでるから」
「わかった、梛。どうもありがとう」

名前呼ばれた。
なんか・・・美人ってゆうのもあってもっととっつきにくい奴かと思ってたけど・・・そうでもないのか?

そう思うのと同時くらいに、教室の扉がガラガラと開いた。

「梛ぃ―?なにしてんだよ、帰るぜー?」
友達の一人が呼びにきた。
「ああ、いまいく」
返事を返して再び綾に向き直る。
「じゃあね」
さっきまでの優しい口調とは裏腹に、今度は今までのイメージどおりのそっけない声。
「あ、ああ、じゃあな」
取り付く島も無い言葉に普通の挨拶を返して教室を出た。


その次の日から。
あの日の二人の会話が嘘のように綾はそっけなくなった。
挨拶をしても申し訳程度に同じ言葉を返すだけ。
話しかけても帰ってくるのは一言ですぐ会話に詰まる。

そしていつもの顔ぶれには綾と急に仲良くしだすなんてどうしたのかと心配される始末。

「梛~、どうしたんだよー」
「まさかあの日の放課後に誘惑されたのかー?」
「梛は俺たちだけの梛でいてくれよー」

そんな言葉は適当に無視しつつ、窓際の綾の席へと視線を向ける。

あそこだけ教室とは違った空気が流れているような気がするのは気のせいなんだろうか。
教室の騒がしさなんてそ知らぬ顔で窓の外をみてる。
そうでないときはブックカバーがかかった本を読んでいたりする。
本を読んでるときに話しかけても決して本から目を離さない。

それからしばらく俺へのそんな扱いは全く変わらなかったわけだが・・・。
ぴったり一ヵ月後の3月14日、変化は再び起こった。

その日はテストの答案返却日。
そして返ってきた内の1枚のテストの解答用紙には『放課後職員室に来い』との文字。

放課後しぶしぶ職員室へいくと、勉強の大切さをみっちり説かれた。
次のテストでは20点アップを約束させられた後、やっと解放された。

「あーあ、ついてないなあ・・・」

廊下を歩きながら校庭を見ると、部活をやっている奴しかいない。
一般生はもうとっくに下校し終わった時間帯だ。

「せっかく午前中で帰れると思ったのに」

教室に帰ってももう誰も待ってくれてはいないだろう。

あーあー、午後は遊び倒せると思ったのに。
こんな天気のいい日にまっすぐ帰るなんてありえねえー。

教室の扉をガラガラと開けると、見事に誰もいない・・・と思いきや1つの人影。
「あれ・・綾?」
「遅い」

疲れきって帰ってきたときにその一言か。
正直ここ一ヶ月の綾の冷たさには何だか疲れてるんだよな・・・。

「そんなに成績悪かったの?」
「今回はたまたまだよっ。呼び出されたのはまだ2回しかない」
「それだけあれば充分だよね」
「うるせえよっ」

あれ、なんか会話が成り立ってる。
今まで話しかけるのはもっぱら俺で、綾は一言しか返してくれたことが無かったのに。

「なんで、今日は・・・」
「なに?」
「いや、今日はよくしゃべるなって思って・・・」
「・・・・」

あーあ、また黙ったよ。

「あんまり人前で話しかけないでくれる?」
作品名:Cant help my accepting... 作家名:律姫 -ritsuki-