キズハ
いい子にしてるから。
いい子にしてるから。
いい子にしていたら
「抱きしめてくれないかな、ほめてくれないかな」って
ずっと想っていたんだ、
キズハが言う
自分に言い聞かせるように
お父さんに嫌われるのも
お母さんに嫌われるのも
みんなに嫌われるのも
いい子にしてないからだ、
お父さんはいつもそう言うし
そうだろうな、と
自分も想っていた
「でもいい子ってなかなかなれないの」
くすくす、そう言って笑う
笑い方が辛くって
僕は右に目をそらす
夕陽はだいぶ落ちてきて
寒い風が吹き始めている
どうしても求めてしまう
トートに
マーマに
手をつなぐだけでいい
頭なでてくれるだけでいい
ほめてくれないかな
名前を、
呼んでくれないかな
いい子になりたかった
「なりたかったなぁ」