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VARIANTAS ACT3 再会

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Captur 4

「なに、二人は知り合いなの?」
 グレンはきょとんとした顔をしながら、エステルに尋ねた。
「ねぇ、エステル。『ヘルゲート・ビンセント』ってだれ?」
「『ヘルゲート・ビンセント』。本名ビンセント=キングストン。職業、HMAパイロット。前大戦でアフリカ戦線に傭兵として参加。同戦線に参加していたグラム=ミラーズの部隊とチームを組み、その類まれな戦闘能力で大佐と並び、『地獄の門のビンセント』、『地獄の炎のグラム』と言われた人物です」
「へぇ。じゃあ大佐とは友達なの?」
「…さぁ…」
 珍しく不確定な返事を返すエステル。
 不思議に思い、グラムとビンセントの会話に耳をすますが、二人は無言。
 先に口を開いたのはグラムだった。
「しばらく見ない間に、まさか傭兵からテロリストに成り下がっていたとはな」
「テロリストじゃねぇ! 今でも傭兵だ! ったく…おまえこそまだ軍にいたのか?」
「いまは軍ではなくサンへドリンにいる」
「けっ! あのいけすかねぇ連中か…」
「誰からの指示だ。何が目的だ。この砲か?」
 ビンセントが一つため息をつく。
「んな事言えるわけねぇだろ。第一、俺がおまえに言うと思うか?」
「思わん」
 グラムは即答した。
「俺もお前に質問が有る」
 少々恨みのこもった声。
「お前…… 俺の大事にしてたウイスキー、勝手に持っていっただろ!」
「…は?」
 突然のとぼけた質問に気が抜ける。
「『は?』じゃねぇよ! おまえ俺の酒、隊が帰還する時勝手に持って行っただろ! そのせいで俺は何度戦場で死にかけた事か!」
 溜息をつくグラム。
「おまえ何を言っているんだ?」
 一瞬の沈黙。
「あれは賭けで負けた時のだろ。自分が賭けて負けたじゃないか…」
「そうだったか?」
 気の抜けた返事をくり返すビンセントとグラムに、管制室にいた者達は呆然としていた。
「さて、ビンセント。この状況どうする?」
 ビンセントに向かって殺気を発するグラム。
「この状況じゃどっちかが死ぬな…」
 確かに後ほんの少しの動作で勝敗が決まる状況。
 二人の間に緊張が走る。
 一触即発の状態の中、先に腕をおろしたのはビンセントだった。
「やめだ、やめ!こんな人間と喧嘩して勝てるわけがない。 おい!全機!撤収だ!」
 グラムの機に背を向けるビンセント。だが他のHMAのパイロットは納得できていなかった。
「野郎!」
 1機のHMAがグラムのHMAに襲い掛かろうとする。
 しかし。
「止めとけ!」
 パイロットを制止するビンセント。
「おまえら、やるのは勝手だがな…皆殺しにされるだけだぜ…?」
 自然とパイロット達の脳裏に今までの情景がフラッシュバックし、襲い掛かる勇気をろうそくの火の様に消し去った。
 HMAたちが足早に去って行く中、ビンセントのHMAが足を止めた。
「おい、グラム。またどこかで逢うかもな…」
 そう言うとビンセントは火星の荒野に消えていった。
 グラムはしばらくビンセントのHMAの背中を見つめてから向きを変え、エレベーターに向かった。
「博士」
「は、はい!」
「実験は成功だ。帰還する」




************




「ご苦労だったな。ミラーズ」
 ガルスが帰還したグラムにこう言うと、彼は苛立った口調で答えた。
「ええ。資料通りテロにも巻き込まれましたよ」
「そうか。それは災難だったな」
「あの資料には載せなかった事が有るんじゃないですか?」
 グラムはガルスが知っていて、自分を行かせた事を分っていた。ガルスのやった事をグラムは何もかも気に入らなかった。
「知らんな」
 ガルスは冷淡な口調で否定。
 グラムは奥歯で苦虫を噛まされた様な気分だった。
 あれから1ヶ月。
 あの事を思い出しただけで、胸のむかつく思いがする。
 資料にちゃんとビンセントの事を載せていれば、HMAのパイロットは無駄に死ぬ事は無かっただろう。
そんなことを考えながら、朝、彼はベッドから身を起こした。
 髪をかき上げ、ため息をつく。
 そのとき、部屋のチャイムが鳴った。
 ――誰だ、こんな時間に…
 ドアを開ける。
 その瞬間、グラムの目が点になった。
 そこにいたのは紛れも無く…
「グレン…?」
 彼女は、満面の笑みで挨拶。
「おはようございます、大佐!」
「な、なぜここに…?」
「エステルに聞いて」
「あ、いや、そういうことではなくてな…? ここで何をしている?」
「うちの研究所、あの後解体になったんです…あまり利益を挙げてない研究所でしたし…それでここに出向する事に決めたんです」
 呆然とするグラムをよそに、彼女は小さく敬礼。
「本日、ジェネシック‐インダストリーからサンへドリン技術開発部に出向して参りました。グレン=ヴェジエです!宜しくお願いします!」
 彼女はそう言って微笑んだ。


[ACT 3]終