VARIANTAS ACT2 ThePerson
「(そうか……。これが“死”か)」
広がる闇。
「(じゃあ、僕は死んだのか……。そんな馬鹿な……だってこれは……)」
闇は、無限の彼方まで広がっている。
「(そうか、スタイナーはこれを見たのか……)」
彼は何故か非常に落ち着いた気分だった。
「(あぁ……ここにずっと居られれば……)」
小さな光点が、闇の中に現れた。
白くて明るい、温かい光。
「(眩しいなぁ。なんだよ、もう……)」
目をつぶろうとも、身体の感覚が無い。
第一、瞼が有るかどうかも解らない。
突然、彼の“身体”が取り戻される。
闇に浮かぶ身体。
彼は無意識に、掌で光を遮る。
すると、“誰か”が彼の背中を押した。
「うわっ!?」
声が出た。
光に吸い込まれていく彼の身体。
彼は急いで振り返った。
「スタイナー!!」
彼は無意識にそう叫んだ。
光に包まれる彼の身体。
次の瞬間彼は、シミュレーターの中にいた。
頭を左右に振るレイズ。
思考にブランク。
「シミュレーター……?」
0.5秒で気付く。
「サラ! 大丈夫かい!? サラ! サラ!」
サラの肩を揺らす彼。
彼女はゆっくり目を開けた。
「ん……」
「よかった……」
サラの無事を確認したレイズは安堵の表情を見せた後、直ぐに肩を落とした。
そんな彼に、サラが言う。
「すみません、でした……」
彼は彼女の瞳を見つめ、聞き返す。
「何故謝るんだい?」
「私は……」
突然、シミュレーターのハッチが開く。
「軍曹、無事か?」
顔を覗かせる隊長。
彼の眉間には、シワが寄っていた。
「すみません……大丈夫です」
謝るレイズ。
そんな彼を見た隊長は、大きな溜息をついてからレイズに言った。
「お前に面会だ。女だとさ」
「面会、ですか……?」
怪訝な表情のレイズ。
隊長は、彼の胸倉を掴んでシミュレーターの中から引っ張り出した。
「とっとと行け。そして休暇でも取れ」
彼はレイズにそう言うと、突き放す様にその手を離した。
「でも……」
サラの様子を伺う彼。
彼女は一瞬、彼の顔を見てからすぐ、目を逸らす。
眉を歪めるレイズ。
彼はシミュレーション室から、施設ロビーへ、脇目も振らずに向かった。
逃げる様に。
目を背ける様に。
ロビーへ着くレイズ。
すると、黒い喪服を着た女性が目に留まった。
一瞬目が合う。向こうもこちらに気が付いた。
何故かは解らない。だが彼には、彼女が、自分を待っている人だと自然と悟った。
「あの……」
「ザナルティーさん?」
「あなたは……?」
彼女はレイズの瞳を見つめた。
悲しい目で。
この世の一切合切を憂いでいる様な目で、彼女は彼を見つめた。
作品名:VARIANTAS ACT2 ThePerson 作家名:機動電介