Gothic Clover #04
テーブルの上にどさっとそれらの食料品を置くと、さっそく食べ始める罪久。
「いやぁ、昼飯まだでさ」
「別にいいヨ。食べながら聞いてクレ」
「あいよ」
ボクはまず、本題から切り出した。
「人杭消太を止めたイ」
「……人杭?」
「アア、人杭、人杭消太ダ。この学校で殺したい奴がいると言っていタ」
「会ったのか?」
「会った」
「ここで?」
「この学校デ」
「……はぁー」
罪久は焼きそばを食べ終わると大きく溜め息をつく。
「どうしタ罪久?」
「いきなりボスクラスかよ……」
「……」
ボスクラス
あの罪久がこう言うからにはかなりやばいのだろう。
「……教えてくれないカ、その人杭消太って奴について」
「あー……しょうがないなネジくんは」
「ありがトウ」
罪久はわたがしを手にとると、それを食べながら説明を開始した。
「人喰倶楽部第4席、爆薬遣いの人杭消太。第4席を名乗ってはいるものの、実は人喰倶楽部の創始者だったりする」
「創始者?」
「ああ、その人杭消太が殺人鬼を集めてあの狂った集団を作り出した。そのころからだと言ってもいい。人喰倶楽部と恵之岸歌劇団の抗争が始まったのは」
「デ、作った途端にいきなり抗争カヨ。原因ハ?」
「あの連中、いや、あいつは、人杭消太は、手始めに団長の一人息子をなぶり殺したんだよ」
「それっテ……」
「前にも言っただろ」
「……じゃあボクは、そんな格違いの相手に喧嘩売ったってコトなのカ?」
「人杭が何をしたって気にするな。自分の命の方が大事さ。あとは俺に任せておきな」
「……何をする気ダ?」
「人杭消太は俺が殺す。ここで会ったが100年目ってやつさ」
「あ、あいつヲ? そんな……だってあいつハ……」
「バカにすんなよ。これでも俺は恵之岸歌劇団最終幕第2番手、冷殺吹雪の喰臓罪久だぜ?」
「デモ……」
「さーて、そろそろ行くとするか」
食べた後のゴミをゴミ箱に捨てる罪久。
「どうする気なんダ、罪久?」
「んー、とりあえず人杭を探す」
「そしテ?」
「殺す」
「……そうカ」
所詮、ボクにできるコトなんて何もない。後はむやみに首を突っ込んでトラブルに巻き込まれるようなことにならないようにするべきだろう。
「それじゃ後頼ム」
「おう」
ボク達は休憩所を出ると、廊下で別れた。さて、クラスに戻って仕事でもサボるか。ボクはぐーっ、と背伸びをした。
人杭の件は罪久に任せたし、罪久は強い。この出来損ないのボクよりも、はるかに。
だからきっと、大丈夫だ。
クラスに戻った。
「お、捩斬戻って来た」
「おせーぞ捩斬」
「悪い悪イ、ちょっとヤボ用でネ」
「じゃあさっさと仕事してくんねーか?」
掻太がボクにお盆を渡す。
「ン? 接客は女子の役目でハ?」
「折角その服着てんだから接客しろよ」
「そろそろ忘れられていたこと言うなヨ」
「ほら、早く行った行った」
「ハイハイ」
ボクは早速渡されたコーヒーを客に渡しに行った。コーヒーを渡された客は、ボクを不思議そうな顔で見上げた後「どうも」とだけ言ってコーヒーを受け取った。
……だんだん慣れてきた。
「ただいま」
振り向くと人飼が立っていた。どうやらだいたいのアトラクションはまわったらしい。手に幾つかの景品を持っている。
「おかえリ人飼。どうだった?」
「ん、つまんなかった」
「あ、ソウ」
ボクはケーキをクーラーボックスから取り出すと皿の上にのせた。
「そこの薬とって」
「ン、コレ?」
「そう」
ボクはカバン置き場の隣りに置いてある薬が入っている紙袋を人飼に渡した。
「えっと風邪気味なんだっケ?」
「うん。大したことはないんだけどね。喉が痛いから」
そう言って人飼はカプセルを飲む。
「さ、さっさと仕事しちゃいましょ」
「お、オウ」
ボクはケーキがのった皿をお盆にのせる。こうやって仕事をすれば、そのうち学園祭なんか終わるだろう。
そしてこの後、ボクはまた後悔をすることになる。
作品名:Gothic Clover #04 作家名:きせる