Gothic Clover #04
「しょうがないヨナ、だってオバケ屋敷って他人を驚かすためにあるんだモン。驚いて普通だヨナ」
「…………」
「何カナ人飼君、その軽蔑と哀れみを足してそれを侮蔑で割ったようなその視線ハ」
「……………ハッ」
鼻で笑われた。
まぁ、当然のような当たり前のような、そんな感じは拭えないワケだが。結局「キャーー」って叫ぶことになったのはボクの方だったし。反撃しちゃ駄目って結構苦手なんだよな。
「デ、次はドコ行くノ?」
「理科部のカエル解剖」
カエルの解剖、ね。客にそんなもん見せてもいいのか?なんでも出血大サービスで一日に10匹ものカエルの解剖を披露するとか。
まさに出血。
命は大事にしましょう。
真面目な話。
というワケでボク達は生物教室に向かった。
そういえば罪久も見るって言ってたな。大丈夫だろうか?人飼や掻太には、罪久に会わせたくない。あいつ、同じだからな〜。似てるんじゃなくて同じ。
生物教室に着くと、ちょうど解剖が始まるところだった。急いでボクと人飼は教室に入る。
まわりを見渡す。良かった、罪久はいない。
解剖が始まった。白衣を持った理科部の生徒が来て、次にカエルが運ばれてくる。
ちなみに種類はヒキガエル。結構でかい。
つーかなんでカエルの解剖なんだ?他にもいい見世物は思いつかなかったのだろうか?不明だ。
カエルは両手両足を固定されて腹を上に寝かされる。そこに理科部のメスが入る。腹を切り開いて内臓を出し、ピンセットでそれを丁寧につまむ。更にその中から腸を取り出してその長さをものさしで計り………
ぞくり
ふと、横を見る。
そこには、やはり、存在した。
男性、年齢は20代前半、オールバック、ピアス、薄手のコート。特徴を挙げればこんなものだろうか。特にあのコート、多分凶器が大量に仕込まれている。
男がこちらに気付く。
……危ない、危うく目が合うところだった。
気付けば解剖は終わっていた。肉の山と、ただの容器と化したカエルの骨と皮。
「ありがとうございましたー」
血まみれの白衣のまま手を振る理科部員。こいつら、カエルに怨みでもあるのだろうか?
「ねェ、人飼」
教室から出ながらボクは言う。
「ボク、そろそろ教室に戻っていいカナ?」
「なんで?」
「もうすぐボク、クラスの仕事あるカラ」
これは本当。でも、もうひとつ理由はある。今から起こす行動に、人飼を巻き込みたくないのだ。
「……わかった」
人飼はプイッと踵を返すと足早に行ってしまった。
………怒ってる?なんで?
さておき理由はあとで聞くとして、ボクは廊下を見渡す。
………いた。
オールバックにピアスにコート。かなり目立つ。
さて、行くか。
ボクは追跡を開始した。
なるべく平静を装い、気配は完全に消さずに気にならない程度に。直接見るワケでもなく視界に姿をいれるだけ、でも見失わないように気をつけて。
絶対にバレてはいけないし、接触してはいけない。
ただボクは彼の行動を確かめるだけ。ボクにとって害なのかどうか確認するだけだ。それだけ確認したら即座に追跡を終了する。
彼がどちら側かは知らないが、状況把握はしておいた方がいいだろう。
トラブルは、起こる前に取り去らねばならない。
せめて、トラブルがこれから起こるかどうか把握しておいた方がいいだろう。
作品名:Gothic Clover #04 作家名:きせる