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紙という会話手段。

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「よっ。元気してたか?」
 フードコートに見覚えがある奴が突っ伏しているのを見たものだから、ゲーセンに行くという連中と別れて、茶化してやろうと肩を叩けば、酷く驚いたように目を見開いたスランが此方を見ていた。
 着ている学ランが灰色に見えるくらいに漆黒の髪に、光の加減で茶にも蒼にも見える曖昧な色調をした虹彩がミステリアスな印象を与えるカラスは、何を食す事もなく寝ていたようだ。
「隣、いいか?」
 こく、と頷かれたので頭を撫でてやってからお向かいの席に座った。テーブルにはルーズリーフと薄っぺらい参考書が置いてあるけれど、筆箱を出していないから勉強をしていたのか微妙である。
「こんなトコで勉強するなんて珍しいな」
 参考書の下敷きになったプリントを引っ張り出せば見せつけてきた。『中間テストのお知らせ』と書いてあったものだから、このやる気のない勉強風景がテスト勉強であるという事なのだろう。
 彼には言葉という概念が存在しないのだから、仕方ないと云ったらそれまでだけど、どこか寂しい感じを味わうのだった。カラスの声帯は言葉を発する事をことごとく拒絶していた。話したり叫んだりすると煩いから、の一点で刃を突きつけられたのか、焼き焦がされたのか、はたまた精神的なものかは知らないが話せない身体に形成されてしまっているのだ。
「テストかー、もうそんな季節だよな。というかカラスは今年受験だっけ。どこか志望校はあるのか?」
 手頃なルーズリーフを見つけると彼はシャーペンで文字を書いていた。いつも会話する時に書いているB6のノートの文字より格段崩した、達筆といえば達筆な筆跡で学校名が表示された。
「へぇ……って、これ俺の学校じゃんか」
 ん、と首を縦に振られてしまったものだから、嬉しいやら申し訳ないやら色んな気持ちがぐるぐる回る。俺の学校はお世辞にも優秀な学校ではないし、彼の成績ならもっと上を狙えるというのに、どうして彼は俺のいる学校に来たいのだろう。
 机に頬杖をしながら、理由を考えるものの見当なんて付かなかった。
「そっか、俺もそう言ってくれると嬉しいし。そうだカラス、腹減らないか?」
 彼は少し迷った後に頷いて、一式二人分買うと俺のバイト二時間分ぎ吹っ飛びそうなファストフードを指さしていた。
「それ高いから駄目だって。ほら、あそこのラーメンでいいだろ?」
 一杯300円としない安価なラーメンを指させば不承不承といった感じで頷かれた。買ってくると言って席を立とうとすれば、学ランの袖を引っ張られたのでどうしたかと振り返る。そうしたら『ギョーザも付けて』の一言。結局時給の一時間は吹っ飛んだのであった。
「すみません、ラーメン二つと餃子一つ」
「あらあら、あそこの少年にたかられたようね」
 母親といっても、さして問題の無さそうなパートの方はなんだか俺と顔見知りだったりする。それ故かラーメンの具を若干増やしてくれたようで、チャーシューやらメンマが沢山乗っていた。
「いや、あいつは俺が守ってやらないと駄目ですから」
「そうなの? 弟分って感じね、さぁさぁ早く温かい内に持ってってあげなさいよ」
 食器が乗ったトレーをこちらに押しやってくるものだから横にあつらえてあるコーナーから箸だけ引っ付かんでカラスの方を見れば。カラスはなぜだか制服姿のお兄ちゃんに絡まれていた。
作品名:紙という会話手段。 作家名:榛☻荊