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Gothic Clover #02

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 なんなんダ!! ……と、やぶさかに叫びたくなるこの状況(実際には叫んで無いケド)を解りやすく説明するとすれば、ボク達は警察の方々に反吐が出るほど有り難い人生の有効な使い方を教わった後に人飼と駅で合流して、電車に乗った後にそのまま喫茶店、「March hare」に行って下見ついでに夕食をとろうとしたのだが、喫茶店の従業員のお姉さんが異様なまでに話かけやすく、掻太がそのお姉さんと息がパズルのピースの如く合い、話している内に口を滑らせて余計なコトまで口走ってしまい、最終的に、掻太はボク達が今まで関わった事件のコトを(多少の脚色を加えながら)マシンガンの如く語るコトとなったのである。
 ちなみに今は丁度あの眼球事件の部分を(かなり脚色を加えながら)語っている。

「まさにその時! 俺達が窓から教室に入り、バッと背水傍嶺の前に現れまして!!」

 実際はドア(の鍵をこじ開けて)から出て来たダケだ。

「ふんふん!!」

 だがお姉さんは夢中で聞いている。
 ボク達の他に客はいない。
 話が話だったから、それは有り難かった。

「そして奴をビッと指差して『俺達を騙すなんて百年早いぜ!!』って叫んだんスよ〜」
「キャー。かっくいぃいーぃ」

 そんなセリフ言ったっけ?
 ボクはパスタを(和風キノコ)フォークでくるくる巻いて、口に運んだ。
 掻太は明太子パスタを、人飼はグリーンサラダを食べている。
 やっぱり人飼は菜食主義者なのかもしれない。

「じゃあ私の目の前にいるこの子が、その眼球食べちゃう変態に『緊縛女子高生』ッ!! ってな卑猥な響きがする状態にされてたワケ?」
「……まぁ、そうなりますが」

 明らかに人飼は困っている。

「ねーねー、動けないのをいい事に、えっちなコトされなかった?」

 なんなんだよこのキャラ。

「……」

 人飼は黙ってしまった。
 目が死んでいる。
 怒っているか、あきれているのか、どちらかだろう。

「無愛想なトコがかわぃい〜!!」

 お姉さんが人飼を抱き締めた。
 もう意味がわからない。

「……!!」

 人飼は驚いていた。
 多分、こんな唐突に抱き締められるとは思わなかったのだろう。
 顔が赤い。
 照れてる?

「ねー、お名前はなんて言うのかな?」
「……人飼音廻です」
「ヒトカイネネ……ネネちゃんか〜。かわぃいねぇ〜」

 頬擦りしてやがる。

「そぉ言えば君達はなんて言うのかな?」

 人飼を抱き締めながら聞いてきた。
 
 ああウザイなぁ。
 このキャラすごくウザイなぁ。
 次のページあたりでサクッと殺されないだろうか。

「桐馘掻太ッス」
「掻太クンか〜。で、そこのさっきから一言も喋らない、死んだ目をしてるけどキュートな男の子は誰かな?」

 ボクはそんな認識か。

「あー、こいつは……」
「いいよ、掻太。自己紹介ぐらい自分でスル」

 ボクはこの状況に陥って初めて口を開いた。

「むぉっ、喋った!」

 無口キャラになった覚えは無い。

「ボクの名は首廻捩斬といいマス。また会う予感がするのならバ、覚えていただければ光栄デス」
「うわ、案外普通の自己紹介だった」

 この人はボクに何を期待していたっていうんだ。

「で、ボク達が名乗ったのニ、あなたが名乗らないってのはルール違反じゃありませんカ?」
「ん〜、そもそもルールというのがあるかどうかはわからないけど道理は通ってるから特別に教えてあげようかな〜」
「特別なんですカ?」
「特別に教えてア・ゲ・ル★」
「わざわざエロく言い直さなくていいデス」
「私はただ『教えてあげる』って言っただけだけど〜?思春期な捩斬クンはどんないやらしい事を考えちゃったのかな〜?」
「揚げ足を取ってないで早く教えて下サイ!」
「で、捩斬はどんな事を考えちゃったの?」

 掻太がニヤけた顔で言ってきた。

「オマエは乗るナ!!」
「捩斬クン……」

 珍しく人飼が話しかけてきた。何を言う気だろうか?

「……なんだヨ」
「不潔……」

 なんだか惨めな気分になってきた。

「ま、そこのムッツリスケベな捩斬クンは置いといて、自己紹介をすれば、私は紫猪詩波(ししし しなみ)っつーんかな」

 絶対に苗字で呼びたくない名前だ。

「しししし、なみ?」

 掻太は見事に間違えている。

「違〜う。ししし、しなみ。名前は『しなみ』から。苗字は『し』が三つまで。まぁ、よく間違われるんだけどね」
「あ〜。はいはい」

 やっと理解したらしい。
 ボクはパスタを食べる。
 ここの喫茶店の料理は確かにおいしいが、従業員があれではなぁ。あんな人、どうして雇ってるんだ? もっとマシな人は他にもたくさんいるだろうに。それとも、あれで一番マシなのだろうか? この店の面接試験風景を一度見てみたい。
 そんなことを考えつつ、ボクはパスタを完食した。

「ごちそうサマ」
「ん、じゃあこれ、片付けるよ?」
「ういっス」

 ま、ちゃんと仕事はしているらしい。詩波さんは厨房へ行くとカチャカチャと音をたてながら皿を洗い始めた。

「なんかいいトコだな。ここ」
「……」
「……」

 沈黙が二つ。

「また来ようぜ」

 ボクと人飼はノーコメントを貫いた。

カランカラン

 入口の方でベルの音が響いた。
 多分、新たに客が来たのだろう。

「またここッスか?おやっさん」
「俺はスパゲッティが好きなんだよ」

 聞き覚えがある声。
 この声は確か……

「…………」
「…………」
「…………」

 沈黙が三つ。
 まぁ、そりゃ言葉を失う程にショックは大きいよな。
 だってその入って来た客ってのが……
 ……あの刑事二人だもんなぁ。
 勘弁してくれよ。
 ボクは今度こそ「なんなんダ!」と叫びたくなった(実際には叫んで無いケド)。
 どうかあの二人がこっちに気付きませんように……

「あっ!」

 あっさりと気付かれた。
 まぁ、客は先程まで僕たちだけだったしな。
 それはともかく、やばい。
 やばいやばいやばいやばいやばいやばいやばい。
 7回繰り返す程やばい。

「おまえら……今度は寄り道か?」
「おいおい狭史。これくらいは高校生として普通だろう」

 さすがに「おやっさん」は物分かりはいい。

「むぅ……早めに帰れよ」
「そのつもりッスヨ」

 思ったより気まずい雰囲気にはならなかった。
 内心ホッとしている。

「おっ、はーくんとおっちゃんじゃん」

 詩波さんが厨房から戻って来た。
 反応から伺うと、どうやらこの二人はこの店の常連らしい。

「めにゅ〜はどうする?」
「オレはカツカレー」

 さすが喫茶店。カレー系のメニューも充実してる。

「ラジャ。おっちゃんは?」
「イカ墨パスタのセット。コーンスープがついてるやつ」
「おっけ。あとネネちゃん達は他にオーダーある?」

 ふむ、金銭的には余裕はある。

「あー、じゃあコーヒー下サイ」
「ラジャラジャ」

 詩波さんは厨房に向かう。
 喫茶店なんだから、ここのコーヒーの味ぐらい知っておきたい。

「なんだ、もう詩波と打ち解けたのか?」

 坂造さんが話しかけてきた。
作品名:Gothic Clover #02 作家名:きせる