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Gothic Clover #02

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 起きた。
 ……寝た。
 ……
 ………
 …………また起きた。
 2時32分。
 2時半?
 随分と早く起きたモノだ。
 まだ夜中ではないか。
 ボクは外を見たくなってカーテンを開けた。

「………………」

 呆然となった。
 カーテンを閉める。また開ける。
 ……昼だった。
 いや、いくらなんでも寝過ぎだ。今から学校へ行っても遅刻であるコトには変わらない。よし、今日は休もう。
 ボクは私服に着替えた。とりあえずお腹が空いた。冷蔵庫の中の作り置きを食べる。
 食べている途中、携帯が鳴った。

『おっすーっ元気ぃ?』

 声とテンションから察するに掻太だ。

「……今、寝おきで不機嫌なんだヨネ」
『あっ、そう』

 コイツ、他人の事情には全くもって無関心である。

「とにかく、今は食事中だから、話なら急な用でない限り後で聞くヨ」
『捩斬捩斬……』
「ン?」

 ボクの食事を妨げる程に急な用なのか?

『ち〜こ〜く〜』

 ……コイツの言うコトに耳を貸したボクが莫迦だった。
 ボクは携帯の電源ボタンを押し、通話を終了した。更に携帯の電源を切った。
 これでボクの食事を妨げる者はいなくなった。ボクは温めた味噌汁をすすった。

「ピンポーン」

 今度は誰だ?
 ボクは立ち上がってドアに向かう。鍵を開け、ドアの取手を捻って押す。

「よっ」
「……」

 制服姿の掻太がいた。
 ボクは二つの疑問を抱く。
 何故掻太がココにいる?
 今は授業中ではないのか?
 掻太の右手を見る。
 掻太は右手に携帯を握っている。
 疑問その1解決。
 人の家の玄関の前で携帯を使うな。オマエは吉良吉影か? 空気爆弾でボクを殺す気か?
 ボクは質問する。

「学校ハ?」
「サボった」

 疑問その2解決
 オマエも人のコト言えないじゃねぇか。

「あっ、ソウ」

 ボクはドアを閉めた。

「ちょっ、えっ!?」

 問答無用。
 鍵を閉める。
 これでよし。
 今度こそ邪魔な奴はいなくなったハズだ。
 ボクは居間に戻った。

「お邪魔してま〜す」

 また掻太がいた。

「……」

 ボクはまたしても疑問を抱く。
 コイツもしかして、ドアドアの実の能力者か?
 やばい。こっちには対抗手段がないぞ!?

「窓ぐらいセコムしとけよ」

 見れば居間の窓が開いている。
 というか、どうやって窓開けたんだコイツ。
 ボクの家は一人暮らしである以上、防犯の為に様々な自作トラップが仕掛けてあるというのに、それが一つも作動していない。
 窓を開けるだけで、天井に設置してあるタライと花瓶が落ちて警報ブザーが鳴る仕掛けの筈なんだが……。
 つーか、人の家に勝手に入るなよ。
 不法侵入罪で通報するぞ?

 ボクは席に着いた。

「で、何ノ用?」
「用がなきゃ、いちゃいけない?」
「ウン」
「冷たっ!!」

 掻太はそう言いながら胸に手をあてて倒れた。
 いっそこのまま死んで欲しい。
 ボクはようやく食事を終える。

「ま、キミがボクの家にいるのも癪だからドコカ行ク?」
「癪なのか?」
「ボクが他人を自分の家に入れるのは嫌いだって知ってるはずダケド?」
「はいはい」

 そういうワケで、ボク達は家を出た。
 コンビニでアイスを買って公園でダベりながら食べる。
 公園とは、この前行って警官に怒られた、あの山舵第3公園だ。
 本当はアイスは苦手なのだが(やはり、お腹を壊してしまうので)こう暑いと食べたくなってしまう。

「もうすぐ人飼来るってさ」

 携帯での通話を終了させて掻太が言った。

「呼んだノ?」
「うん。アイス買ってから来るってさ」
「ヘェ……」

 ボクはアイスをかじりながら呟いた。

「捩斬ぇ」
「……ナニ?」
「地理のレポート終わった?」
「終わったケド?」
「じゃあ、それ後で写させて」
「『写させて』ってオマエ、国語の作文の方はどうなるんダヨ。たしかまだ提出しつないダロ?」
「あー、それもだ。後で頼む」
「作文は写すワケにはいかないダロ?」
「『参考』にさせてもらうよ」

 おいおい

「ったく、なんでレポートやら作文やらを宿題にするかな?」
「生徒イジメが好きだからダロ」
「浜背も和楽もウゼェ!」

 浜背 火那(はませ かな)は地理の教師、和楽 活也(わら かつや)は国語の教師だ。
 2人とも宿題をすぐに出す教師として有名だ。

「そう言えばさ、捩斬、ニュース見た?」
「……見てないナ」
「見つかったてさ。」
「何ガ?」
「5体目」
「……ホウ」
「昨日の深夜だってさ」
「メニューは何サ?」
「脳髄のシチューだとさ。」

 ボクはアイスを囓った。
 そのままシャリシャリと噛み砕く。
 脳髄のシチューか……
 とびっきりイカしたセンスしてやがる。
人肉や内臓を料理している内はなんとも思わなかった。 なぜなら肉や内臓は他の動物のものなら普通に食べるからだ。しかし、脳髄を料理するというは中国のゲテモノ料理以外ではまず無いだろう。
 犯人は何を考えながら人を食べているんだろう?
 「人」という存在を全て喰い尽くそうというのだろうか?
 やばい。
 だんだん興味が沸いてきてしまった。
 落ち着け。
 ボクは関係無い。
 ボクは関係無いんだ。

「で、掻太はどうする気ナンダ?」
「もちろん……」
「現場に行くに決まっているでしょ」
「…………」

 隣りにいつの間にか人飼がいた。
 あまりの唐突さにボク達2人は黙ってしまう。
 人飼はボク達のコトなどお構いなしでアイス(練乳イチゴミルク味)の袋を開けて中身を食べ始める。

「…………」
「…………」
「…………」
「……あの〜」
「え? あ、何かナ?」
「あんまりジロジロ見られると食べにくかったりする・・・」
「あ、ウン。ゴメン。」

 なんか謝ってしまった。
 掻太と目を合わせた後、合意の上で、スルーするコトにした。
 人飼の気配が無いコトは今に始まったコトじゃない。

「……で、掻太。場所はドコなんダ?」
「ん?ああ、えーっと酒刃町だったっけ?」
「酒刃町の酒刃第1公園よ」
「さすがじゃん、人飼」
「電車でどのクライ?」
「下り線で二駅」
「よし、行こうぜ」
「もう行くのカヨ」
「『善は急げ』っていうだろ!?」
「……『急がば回れ』という言葉が一応あるケド?」
「でも、どちらとも『行動するな』って意味ではないぜ?」

 それもそうだ。
 掻太はベンチから立ち上がった。人飼もアイスを完食し、立ち上がる。
 ボクも立ち上がる
 そしてみんなで歩き始める。
 屍体を見るために。

 昼下がりの山舵第3公園。
 ベンチの上に多分、アイスのものと思われる1つのチューベットのカラと、2本の木の棒が捨ててあった。

++++++++++

 山舵駅から電車で二駅、歩いて5分くらいの場所。
 酒刃第1公園。
 その公園内の森林に屍体はあったようだ。
 「あったようだ」というのは、ボク達は実際に屍体を見たワケではないし、何故その屍体を見れないかと言えば、当然の如く屍体はとっくのとうに警察の権力によって回収されているからだ。
 なので、せめて現場に入りたいトコロなのだが……
作品名:Gothic Clover #02 作家名:きせる