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Gothic Clover #02

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 ボク達は病院にいた。
 ボクの腕の傷については、筋肉は何本か切れていたが骨や動脈は無事なようで、一ヶ月もすれば傷は塞がるみたいだった。
 今は人飼と掻太と一緒に病院のロビーで自販機のコーヒーを飲んでいる。
 ボクと人飼は事のあらすじをだいたい掻太に伝えた。

「へぇ、じゃあおやっさんは死んじゃったわけ?」
「ああ、ボク達が殺しタ」
「……そうか」
「私が刺した」
「……そうか」
「…………」
「…………」
「…………」

 何も言うコトはなかった。
 ボク達3人の前には、ただ結果のみが示されるだけだった。

「おーい!」

 振り返ると狭史さんがいた。

「狭史さん、何かあったんデスカ?」
「お前、ウチの署に来たって本当か?」
「ええ、そうデスが何カ?」
「おやっさんを追いかけていたって本当か?」
「……ええ、そうデスが何カ?」
「じゃあ、知ってると思うんだけど……」
「?」
「なぁ、おやっさんは何処に行っちまったんだ?」
「…………」
「携帯に連絡しても繋がらないし、何処に行ったかわからないんだ。何か、どんなに小さい情報でもいいから教えてくれ」
「……知りませんネ」

 ボクは答えた。
 人飼と掻太は俯いたままだった。

「本当に?」
「本当ニ。」

 狭史さんはいきなりボクの胸ぐらを掴んだ。掻太が驚いて立ち上がる。回りの人々がこちらを見る。

「とぼけてんじゃねぇよ! 知ってんだよ手前がおやっさんを最後に見た奴だって! なぁ、話したんだろ?! おやっさんとさぁ! わかってんだろ?! この事件の全てをさぁ!!」
「……」
「なぁ、どうなんだよ……」
「…………」
「おやっさんは犯人なのかよ……」
「…………」
「まるでお前ら、おやっさんを犯人みたいに追い─―」
「坂造さんハ……」

 ボクは口を開いた。

「坂造さんハ、全く事件には無関係の人間でしタヨ。あとは、ボクは何も知りまセン」
「…………」
「…………」

 しばしの沈黙。

「…………そうか」

 狭史さんはそれだけ言うと、ボクを離した。
 回りの人々はボク達を唖然と見ている。

「悪かったな。それじゃ、俺もう行くわ」
「狭史さン・……」
「邪魔したな」

 そう言って、狭史さんは病院のロビーを出て行った。

「結構すんなり帰って言ったわね」
「激しいバトルを予想していたんだけどな」

 そう言って掻太は脱力するように座った。

「でも狭史さん、本当にあの事を聞くためだけにこの病院に来たのかしら」
「多分、彼は安心したかったんダヨ」
「ん、どういう事だ?」
「彼はきっとわかってるんだと思ウ。奏葉坂造が犯人だって事ガ。でも、認めたくナイ。自分が昔から慕ってきた人間が殺人者だなんて認めたくナイ。だから、彼は事件を知っているかもしれないボク達に質問をして来たんダヨ。ボク達が『奏葉坂造は犯人ではない。』と答えるコトを期待してネ」
「でも嘘ついていいの?」
「今の彼にはとにかく『安心』が必要なんダヨ」
「それが嘘でも?」
「嘘だろうが夢だろうがそれは必要なんダ」
「儚いな」
「儚いネ」
「切ないわね」
「切ないヨ」

 ボク達3人の前にはただただ、結果のみが示されるだけだった。

「さてと、メシでも喰うか?」
「そうダナ。運動したから腹が減っタ」
「その前に着替えさせて。私、血まみれだから」
「あーじゃあ、7時にマーチに集合な」
「オッケ、じゃあ帰ルカ。」

 ボク達は病院を出る。
 何事もなかったかのように。
 全てが戯曲だったかのように。

「7時だぞー! 忘んなよ!!」
「忘れねぇヨ」
「それじゃ、また後でね」
「おぅ!」
「じゃあナ」

 ボク達は、また後で会えるというのに何故か別れの言葉を交わした。

「下らネェ……」

 別れの言葉を、交わしたかった。









 黒白詰草 第弐話 了
作品名:Gothic Clover #02 作家名:きせる