variable―ヴァリアブル― 1
第1章 事の始まりはいつも日常
「さて、そろそろ頃合いかな」
朝9時半、僕は軽い足取りで自室を出る。
「ちょっと出かけてくるから~」
母親に一声かけ、早々に家を後にした。
*
現在10時02分、少し遅れたがまあいいだろう。
僕、彩涼工児(さいりょうこうじ)は、
ゲームショップ<団塊の世代>略して<団世>のレジにて、
予約してあった<ヴァリアブル>という名の家庭用ゲームを購入しているところである。
「感謝しろよ、これ仕入れるの苦労したんだからな」
<団世>の店主石再世(いしさいせ)さん、
通称石さんは褒めちぎれとばかりに胸を張る。
「うん、ありがとう石さん。
それにしてもよく手に入りましたね。これ」
「ああ、俺もお前に頼まれた時は無理だと思ってたんだがな。
3日前のことだが俺のブログにレスがあったんだよ。
<ヴァリアブル>をお探しの方にってな。
で、そこに扱ってる業者が書いてあってな、
メールしたらこの1本のみ手に入ったわけよ」
「そうだったんですか、じゃあそのレスくれた人に感謝
しなくちゃいけませんね」
「そうだな、だがそれ以上に俺に感謝の言葉を」
「ありがとうございました」
「まあ、またなんかあったら俺を頼ってもかまわないぜ」
「はい、ではまた」
<ヴァリアブル>を大事にバックにしまうと店を出る。
*
「さて、夕飯の買い物でもするか」
僕は行き付けのスーパーを目指し歩を進めた。
「あーっ、やっと見つけたー」
ふと、後方から聞き慣れた声がする。
振り返ってみると予想通りの少女の姿があった。
「やあ、利夜どうしたの?」
彼女の名前は、舞橋利夜(まいばしりよ)。
僕の幼馴染でお隣さんである。
「どうしたのじゃないよ~、エコを探してたんだよ」
利夜の言うエコというのは僕のニックネームである。
「探してたって・・・、何か用事?」
「まあ用事かな♪」
「それで、なにかな?」
「一緒にお昼食べようかなって」
「うん、それはいいんだけど、
今から夕飯の買い物しようかなって思ってたもんでね、
それが済んでからでもいいかな?
1回家に帰ることになるけど・・・」
「あ、うん、構わないよ」
「じゃあさっそく行こうかと思うけど利夜はどうする?」
「私もついてく」
即答だった。というわけで利夜を連れスーパーへと歩を進める。
*
スーパー<地球規模>略して<地模>は店は小規模だが、
品数が多く、野菜や肉・魚の鮮度がいい事もあり、
この近所では密かに大人気の私営店である。
「ところでエコは今から何買うの」
「そうだね~・・・。
このチラシに載ってる豚のミンチは買うつもりだから、
それをメインとして使えるハンバーグの材料でも買おうかな」
「ハンバーグかぁ、いいなぁ、食べたいなぁ」
利夜はちらちらとこちらを見ながら「食べたい」とつぶやいている。
「そうだ、そんなに食べたいならさ、
お昼、家で食べない?ハンバーグ作るからさ」
「え、ほんと!?やったぁ。ぜひお邪魔させていただきます」
「よし、そうと決まったら買うものは確定したから、
ぱっぱと買ってきちゃうよ」
「あ、私もついてく」
作品名:variable―ヴァリアブル― 1 作家名:ファーストウッド