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それは夢にも似た何か

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「や・・・・・」


ってしまった。記憶がさっぱりない。
とりあえず頭が痛い。胃の上下がひっくり返ってる感もある。あと肩が寒い。
んでその肩に何か知らん謎の生物の歯形と思しき跡がある。それから何気に衣服着用時独特のごわごわした感じもきれいさっぱりない。
布団が狭い。何故だ。最近片付けたばっかりだから本に制圧されてるということもないはずなのだが。
どうやら生きているらしい温かみが先程から時々当たるのだが俺の家にペットなどいない。猫アレルギーだし、犬は小学校時代に噛まれて以来苦手としているものの一つである。そんなことはいい。


(掃除も夢か・・・?)


寝返りを打った。
純度100%の混乱。


「・・・・・」


まさしく絶句。
五言絶句。
七言律詩。
何だっけ。漢文?
子、曰く。歴史上の偉人に逃げたくなった。
孔子よ教えてくれ、酔って記憶をなくした翌日、世間の定義とやらに当てはめれば悪友とでも呼べるような奴が隣で寝ていた際の対処法を。
しかも、だ。
そいつが男で、これといって服を着ていない状況だった場合の話だ。


「・・・小坂」
「なんだよ」


目が合った。
黙られた。
まぁ、何を言ったらいいのか分からないわな。
しばらく見つめあってしまった、気持ち悪い。


「覚えてるか」
「知らん。喉いてぇ」
「乾燥してんじゃねーの」
「加湿器つけていい?」
「・・・いいけど」


選んだ結果は敢えてのスルーだった。
かっすかすの声であーだとかうーだとか謎の音声を発している横で一つ、確定した事実。
なんか、やたらとすっきりしている。
学祭の準備で溜まりに溜まったあれやこれやが、さっぱり。
ということはだな。


「酔ってたんだよな」
「店出た記憶しかねぇよ」
「だよなぁ」
「責任取れとか言わんから安心しろ。酒抜いて帰るわ」


アルコールの暴走の末の間違い。
生産性のどこにも見当たらない、ある意味で「行き過ぎた」友情、というやつだ。
友情とも言えない気がするがまぁ、言葉が見つからないのでそういうことにしておこう。
理系の人間とは得てして説明で何でも片付けたがる生き物である。



作品名:それは夢にも似た何か 作家名:蜜井