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The SevenDays-War(緑)

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 イークウッドは森の中を歩いていた。もちろん一人ではない。
 先導するユノフィアの背中をひたすらに追い掛ける。
 空は完全に枝葉によって覆われ、太陽の位置すらも分からない。昼尚暗き密林内の強行軍。
 方向も、距離も、疾うの昔に失っている。
「村の存在は、あんまり知られたくないんだ」
 ユノフィアはそう語った。
「物騒なところに助けられちまったもんだ」
 イークウッドはそう笑ったが、実際は笑い事ではなかった。

 ネテラウィスクは毒術師の隠れ里。その存在が知れるだけで、どれほどの権力者が脂汗を流すことになるのか、その数を把握しているのは里長ぐらいのものだ。
 ネテラウィスクの存在が発覚してしまえば、村に対する口封じが行われるのは目に見えている。自分たちの身を守るため、村の近くで発見した遭難者はその場で命を絶つように掟で定められている。
 本来ならば、イークウッドも掟によって命を奪われているはずだったのだ。
「こんなことしなくても、二度と近寄ったりしないよ。俺は死にたくない」
 イークウッドは、場所を知られないために行っているのであろう遠回りを非難する。森の中を半日以上歩かせられたイークウッドの疲労は限界に達していた。
 前を行くユノフィアは、朗らかな笑みを浮かべてイークウッドを振り返る。
 イークウッドはその場にへたり込でいた。
「アタシだって死にたくないもの」
「笑って言うことじゃねぇだろ」
 思わず本音を漏らすイークウッド。
「約束だけは守ってね」
 ユノフィアは真顔になっていた。
「命を助けてもらったからな。えーっと、北門の門兵長代理をやってたアーノルドっていう騎士にこの通行証を渡せばいいんだよな?」
「そうよ。他の誰にも話してはダメ、聞かれてもダメよ。伝言もダメ、手紙もダメ。必ず本人に直接渡して。それが無理なら、すべてを忘れて」
「わかってるよ」
 ならいいんだけど、とユノフィアは表面的な笑いを浮かべた。

 それからしばらく歩いたあと、ユノフィアは再びイークウッドを振り返った。
「アンタ、泳げるかい?」
「あ? それなりには」
「そ、良かった」
 ユノフィアは、にっこり笑っていた。
 イークウッドの背中に、ぞくりと悪寒が走る。
「この先は、流れに沿って進むだけで森を出られるから。そしたら、エルセントの城壁が見えるはずだよ」
「流れ?」
作品名:The SevenDays-War(緑) 作家名:村崎右近