The SevenDays-War(緑)
(終) 道 標
「これが、ペディーニ卿から聞いた話のすべてじゃ」
「ネテラウィスク……」
ナインは村の名を呟いた。
「クオンたちがお主を保護した場所の名じゃよ」
大司教は顎鬚を二度しごく。
「あの当時、襲撃事件の裏を探らせるべく、クオンたち三人の聖騎士を派遣しておったのじゃ」
「その村にいたということは、僕はポポマなのでしょうか?」
「お主にとって、ポポマかどうかが重要なのではあるまい?」
その傍らに座るミース・T・キャロライナは、大司教に厳しい視線を送り続けてはいたが、言葉を挟むことはしなかった。
「仮にポポマであれば何とする? ポポマでなければ何とする?」
「それは……」
ナインは言葉を失う。
自分が何者であっても、自分であることに変わりはない。
もし自分が世に災いをもたらす存在なのだとしても、自ら命を絶つという選択をできるだろうか?
ナインは考える。
そして、答えはすぐに得られた。
自分が厄災を招く存在であったとしても、傍らの少女ミース・T・キャロライナが望まぬ限り、自ら命を絶つことなどしない。
その時が訪れるまでは、義父ニアライト・クオンが目指していたものを追い続けよう。
それがナインの答えだ。
自分が何者であるのかを受け入れるだけの器は、まだ出来上がっていない。
いまは、その想いを確固たるものにするべく邁進するだけだ。
「大司教様、お話ししていただきありがとうございました。もう充分です」
ナインは大司教に向けて一礼する。
「キャスも、ありがとう。僕は大丈夫。まずは身体を治すことに専念するよ」
「ま、アンタがそう言うならそれでいいわ」
そうは言ったキャスの顔には、納得していない、と書いてある。
「ほっほっほっ。長話でくたびれてしもうたわい」
大司教は椅子から立ち上がると、そのまま扉に向かって進んだ。
「許しておくれ、ナイン」
大司教の声は白髭の中に埋もれ、誰の耳にも届かなかった。
― The SevenDays-War 深緑の英雄 了 ―
作品名:The SevenDays-War(緑) 作家名:村崎右近