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オレと彼女と心霊写真

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「でも言えなかったんです。真由美ちゃんのことを言ってしまうと ━━ そうして身元がハッキリしてしまうと、チョーさんはきっと“まずは真由美ちゃんの両親に報告しよう”とか“霊媒師に相談してみよう”とか …… きっと真由美ちゃんの霊を成仏させようと考えて行動を起こすかもしれない、と思ったんです …… もちろんそれは素晴らしいことですし、お互いにとってもすごく良いことだとは分かってました。 …… 実際、その通りになりましたし」

オレは黙って聴いていた。緊張を悟られないよう、小さく深呼吸した。

「もちろん、真由美ちゃんが成仏してくれて、心から良かったとは思っています。でも、そうなると、もうチョーさんに会えなくなってしまうのかなと思って、それでなかなか言い出せなかったんです …… ごめんなさい」

彼女の声は後半、消え入りそうだった。

「そんなの、オレだって同じだよ」

オレは、彼女から伝わってくる想い?みたいなものに被せるように言った。だが、それに続くべき言葉が、どうしても思いつかない。

「そんなの、オレだって同じだって」

同じ事を二回言った後、オレたちは向き合ったまま、しばらく黙り込んでいた。

「そうだ」
先に沈黙を破ったのは彼女だった。いつもの明るい調子が戻っているように見えた。
「いっしょに写真を撮りませんか?」



オレたちはいつものように身を寄せ合い、彼女がいつものようにケータイを持った右腕を前に伸ばす。いつものようにシャッター音が鳴り、いつものように画像確認をする。



写真には笑顔のオレと彼女、背景は西日が差し込む中庭、隅のほうに写り込んだバケツ。

初めて撮ったオレと彼女の、二人きりの写真。
作品名:オレと彼女と心霊写真 作家名:しもん