透明な少女
それから、一年がたった。
あの日は気がついたら部屋のベッドで転がっていた。
きっと夢だったのだろう、あの娘も、一日も、雪も。
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太陽がギンギンと光る下、働き蟻のようにさくさく歩く。
歩く。
歩く。
そしてまたあの公園を通る。
あの少女は何だったんだろうか、夢だったのだろうか、できれば夢で今自分が生きていることも全て夢であってほしい。
「夢だと思ってるでしょ、私のこと」
後ろから声をかけられて振り向くとそこには
”あの時の少女”がいた。
髪が伸びたあの少女がいた。
「夢じゃないよ、あの後君ね、鞄で私のこと殴ってきたんだよ」
嘘付け。自分はそんなことする人間じゃないぞ。
「嘘じゃないよ痛かったよ」
「殴ったら急に叫びまくって倒れたの、覚えてないだろうけど」
「でもあんなに急に殴って叫んで壊れちゃう人間初めて見た、私ね、君に興味があるの」
少女は話した後、頷いてうんと呟いた。
「君、どこの高校?というか高校生だよね?」
「椿高…あとなんで喋っていないのに自分の思っていることがわかるんですか」
少女はん?という表情をした後、話した
「私が君に興味あるって言ったじゃない、嘘じゃないのよ?君に興味があるから
私君のことずっと観察してたの、去年の…冬、くらいから?」
きっとこの少女は普通じゃないと思った。
「あ、そろそろ帰らないと」
少女は公園の時計をチラッと見て「じゃあね」とこちらに笑顔をむけ、歩いて行った。
あの後帰ってから気づく、あの公園はあの透明な少女と会える、最後の楽園なのだと気づいた。
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白い冬が過ぎて、熱いギラギラした夏がきた。
少女は笑う、君はまた笑ってくれるんだね。
有難う。
君に恋してごめんね、有難う。