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戦え☆僕らのヒーロー!

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鏡の中を覗きこむ。
目を擦って何度も見たけれど、そこには美しい王子も、格好いいモデルも、可愛いアイドルも居ない。
そう、間違いなく僕しか映って居なかった。
真っ黒な髪は少しやぼったく、前髪が長いため、目がちゃんと見えやしない。
さらに、分厚いレンズの眼鏡をかけているのも僕が暗く見える原因だと思う。

まぁ、本来の性格も明るくは無いんだけど。

「はぁ…。」
思わずため息が出た。
こんな自分に満足してるとは確かに言い難いけど、でも、変えたいと思うほど嫌ってもいなかった。
良くも悪くも目立つことは嫌いだし、出来うる限り平凡に生きたい。
生まれてから16年間、彼女は居ないし当り前に童貞だけど、いつかはやっぱり平凡な女性と結婚したいな、とかそんな願望はあった。

そう、人生に不満らしい不満は無かったんだ。
だから、なんでこんなことになったのか僕にはわからない。

・・・目覚めると、そこは異世界でした。






なんて、きっとそっちの方が100倍マシだ。






いつまでも鏡を見ていても仕方が無い。そこには相変わらず垢ぬけない僕が居るだけ。
顔を洗って、適当に髪をとかした。朝ごはんを食べてる時間は…無いな。
僕はパンを牛乳で流し込み、大雑把な歯磨きを済ますと、部屋のドアを開けた。

「おはよう、優一くん。」

朝日に照らされてるせいか、それとも自前なのか定かではないが眩しいほどの笑みをドアを開けた瞬間に浴びる。
きっとこの人、僕がこのドアを開けるの此処で待ってたんだ。
「おはようございます、白石先輩。」
「『白石先輩』だなんて、随分他人行儀だね。亮哉で良いよ。」
「はは、そんな。」
僕は笑って誤魔化して、鞄を持って部屋を出た。
「少し急がないと間に合いませんね。」
「そうだね、ふふ。優一くんはお寝坊さんなんだね。」
「スミマセン。白石先輩がいらっしゃると思わなくて…。」
「良いんだよ、君を待つことも俺の楽しみなんだ。」
にっこりと爽やかな笑みでそう言われ、僕は「はは。」とまた乾いた笑いを洩らした。

僕や白石先輩は寮に住んでいる。
そのため研究所まではそんなに遠くない。
速足で向かうと、すぐに研究所の大きな四角い建物が見えてきた。
「さ、今日も一日頑張ろうね!」
キラッと白い歯で笑う白石先輩に僕は答えながら、ぼんやりと考えていた。

(今日も何も起こりませんように)

そんな僕の願いもむなしく、招集がかけられたのは昼休みだった。
僕は食堂でうどんをずるずると啜っていたところを、同じく食堂でカレーを食べていた黄河先輩の呼ばれた。
「なんか俺ら招集らしいよ。」
「へ?何でですか?」
「さぁ?あれじゃね?赤でも見つかったんしょ!」
「・・・え?」
僕はうどんを片付けながら固まった。
黄河先輩はそんな僕を見て笑う。
「んな嫌そうな顔すんなよー。ま、やっと、ってことで。」
「でも…桃の人がまだ見つかってませんし…僕たちの出番はもう少し後になりますよね?」
おそるおそる聞いた僕の問いを、あっさりと黄河先輩は否定した。
「あれ?お前聞いてなかった?桃はもう見つかったんだぜー。俺はもう会った。優一も今日赤と一緒に桃にも会えるんじゃねぇの?」

会いたくない、と心の中で呟いて、呼ばれた第一研究室まで重い足取りで向かう。
隣で鼻歌を歌う黄河先輩の能天気さを羨ましくも思いながら、僕はため息を吐いた。
第一研究室に着くと、扉の前で白石先輩と青山先輩が二人で並んでいた。
黄河先輩といい、背が高い人たちが並ぶと恐ろしく迫力がある。

「あの、」
「ああ、来たか。」
青山先輩がノンフレームの眼鏡をくいっと指で上げて、凛とした声で言う。
「遅くなってすいません。」
「俺達もたいして待ってないよ。」
「だが、あと3分は早くこれたはずだ。」
白石先輩の優しい言葉を、青山先輩が否定した。
「すいませんでした、以後、気をつけます。」
「そうしてくれ、では、入るぞ。」

コンコンと青山先輩が第一研究室を叩いた。
中から返事があり、青山先輩を筆頭に入室する。
最後に僕が入り、ドアを閉める。

目の前には天狗の仮面を被った怪しい男・・・この人こそが僕たちのボスになるんだけど、相変わらず怪しい。

「ナガネン、マッテマーシター!」
ボスが突然声を上げた。
「ワタシ、キョウノコノヒ、タイヘンウレシクオモイマース。ハイ、ドーゾ、ハイッテクダサーイ!」
ボスが手を上げたほうを見る。
そこには僕たちが入ってきたのとは違うドアがあり、そのドアが開く。