小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」
秋月あきら(秋月瑛)
秋月あきら(秋月瑛)
novelistID. 2039
新規ユーザー登録
E-MAIL
PASSWORD
次回から自動でログイン

 

作品詳細に戻る

 

魔導装甲アレン3-逆襲の紅き煌帝-

INDEX|15ページ/51ページ|

次のページ前のページ
 

「――世界で唯一空軍を保有していたからよ」
 小型飛空機の精鋭部隊?黒の翼?といえば、戦地において畏れられる存在だ。そして、もっとも畏れられていたのが、空飛ぶ要塞である巨大飛空挺キュクロプス。
「アタクシが集めた情報によると、大臣派はたったの3機しか飛空機を保有していないらしいじゃない。それでも普通の軍隊から見れば超強力な兵器でしょうけれど。もしも、アタクシが飛空機ではなくて、飛空挺を持っていると言ったらどう? それも魔導砲なんてオモチャを積んでるなんて言ったら?」
 即座にヴィリバルトが否定する。
「バカなっ、飛空挺はこの世にたったの3機しかないんだぞ。そのうち1機だった世界最大級の化け物キュクロプスはもうないはずだ。残る2機はそもそも非戦闘機で、神聖クリフト皇国とロマンジア連邦が保有している」
「なぜ世界に3機しかないのか。それはロストテクノロジー頼りで、1からつくる技術がないからよね。アタクシ軍事会社の社長だったのだけれど、過去形でいうのは勝手に辞任させられたみたいで、副社長がまんまとアタクシの後釜になったらしいからなのだけれど。じつはね、極秘プロジェクトで飛空挺を造らせていたのよ。それを貸してあげるわ、いい話でしょう?」
 自信満々の笑みを浮かべたライザ。

 荒野を走るエアカー。
 風の抵抗が少ない楕円形のフォルム。地面から少し浮きながら、ほぼ無音で走行する。
 運転しているのはジェスリーだ。横の助手席にはアレンが乗っていた。
「すげえな、リリスの姐ちゃんのよりビュンビュン進むぞ」
「まさか以前にもエアカーに乗ったことがあるのですか?」
「ああ、リリスっていう得体の知れない婆みたいな姐ちゃんがもってた」
 驚いた表情をしてジェスリーはアレンに顔を向ける。
「リリスというのは、まさかと思いますがリリス・イブール博士では?」
「さあ、どうだろ?」
「言われてみれば、リリス博士がこの時代まで生きているわけがありません」
「俺の知ってるリリスはそーとー長生きしてるっぽかったけど。下手したらロストテクノロジーの時代から生きてるかもな。そんな得体の知れない姐ちゃんだった」
 妖婆であり、妖女である。リリスはどこか時間を超越した存在だった。
「もしかしたら、それは本当にリリス・イブール博士かもしれません。普通の人間ならば、何千年も生きられませんが、あの方であればそれが可能だったかもしれません。その方はもしやサイボーグだったのでは?」
「生身だったよ。なんとなくわかる」
「そうですか、生身ですか。しかし、それでもあの方なら可能でしょう。あの時代、3本の指に入る科学者でしたから。そして、リリス博士の姉であるレヴェナ博士もその指の中に入っていました。あの姉妹は常に100年先を歩んでいました」
 ――レヴェナ。
 その名を聞いたアレンはなぜか胸騒ぎがした。
「レヴェナ……どっかで聞いたような……」
「レヴェナ博士は我々の救世主でもあります。彼女がいなければ、メカトピアはなかったでしょう。しかし……彼女がいなければ、あるいは、戦争も起きなかったかもしれません」
「戦争?」
「この時代の人間たちが忘れてしまった歴史です。世界中を巻き込んだ大戦でした。かつて存在していた輝ける文明社会で、機械と人間は平和に暮らしていました。しかし、欲に駆られたものが戦争を起こし、文明は衰退し、やがて兵器汚染により世界は砂漠化の一途を辿ったのです」
 荒れ果てた現在の世界は、過去の大戦によるものだとジェスリーは云うのだ。
 エアカーが急停車した。
 驚いて腰を浮かすアレン。
「なんだよいきなり!?」
「自動停止システムが作動しました。おそらく障害物があったのでしょう」
 そう聞いてアレンはフロントガラスから外を見回した。
「んなもんないけど?」
「いいえ、地面に人間がいるようです」
「轢いたわけ?」
「いいえ、ぶつかる前に停止しました」
 二人はエアカーを降りて、その人間とやらを確認した。
 泥だらけの小汚い人間がうつ伏せで倒れていた。
「死んでんじゃね?」
 ひと目見てアレンは決めつけた。
「いいえ、生命反応があります」
「見ただけでわかんの?」
「はい、機能として備わっています」
 生きてると聞いて、アレンは地面に転がる人間を仰向けにした。
「あっ」
 そして、小さく驚いた。
 なんと地面に倒れていたのはワーズワースだったのだ。
「どこのどなたか存じ上げませんが……み、水を……」
「おい、吟遊詩人の兄ちゃん。俺だよアレンだよ、あんた生きてたんだな」
 アスラ城の地下遺跡で別れた切りだった。あのときワーズワースは隠形鬼と入れ違いで消えた。周りの者たちは?消された?と感じただろう。なぜなら、未だにアレンたちはワーズワースと隠形鬼の関係を知らないからだ。
 ワーズワースは瞳を丸くした。
「アレン君じゃあ〜りませんか! どーもどーもお久しぶりです」
「なんだよ、すげえ元気じゃねーか。行こうぜジェスリー」
 放置するつもりでアレンはエアカーに乗り込もうとした。
 慌てて元気よくワーズワースが立ち上がった。
「ちょっと待ってください、乗せてってくださいよ。あと水をいただけると幸いです」
 ジェスリーがワーズワースとアレンを交互に見ている。
「見たところお友だちのようですが、乗せてあげなくてもよろしいのですか?」
 救世主にワーズワースは喜んで手を握って一方的に握手をした。
「ありがとう、君はいい人だ。僕の名前は愛の吟遊詩人ワーズワース。アレン君とは大の仲好しなんだ」
「ちげーよ」
 すぐにアレンの突っ込みが入ったがワーズワースは構わない。
「ささっ、行きましょう行きましょう。これリリスのお婆ちゃんの車に似てますね。うん、すごくカッコイイ!」
 適当に褒めながらワーズワースは勝手にエアカーに乗り込んだ。
 ジェスリーがそっとアレンに耳打ちする。
「あの方もリリスさんを知っているのですか?」
「なんていうか成り行きで」
「そうですか。わたくしが人間ではないことは、どうかこれからの旅で一切だれにも言わないでください」
「わかってるよ」
 ブーブーっとクラクションが鳴らされた。ワーズワースが催促している。
「ささっ、早く人里まで行きましょう。道すがら、アレン君たちと離ればなれになったあと、どんな愛と勇気の大冒険をしたか、とくと語ってあげましょう!」
「いいよしなくて」
 アレンの返しが冷たい。正直、めんどくさいのだ。
 ワーズワースは食い下がる。
「残念なことにアレン君は僕に興味がないようなので、ジェスリーさんに僕とアレン君の大冒険を語ってあげましょう。超古代都市アララトでの冒険、アスラ城の地下古代遺跡でのお話、そして革命家トッシュの英雄譚。どれもロマン溢れる詩[うた]ですよ」
 一生懸命しゃべっているワーズワースだが、ジェスリーも聞いていなかった。彼の気は遥か空に向けられていたからだ。
 ジェスリーが空を指差した。
「あれを見てください。飛空挺でしょうか?」
 まぶしさに眼を細めながらアレンもその飛空挺を見た。
「いったいどこのだ?」
 ワーズワースもエアカーから身を乗り出した。