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CROSS 第1話 『特殊部隊『CROSS』』

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「おそらく、ステーション側の通信設備が破壊されてこちらとの通信が切断されたと考えられます。向こうで断末魔の声や通信していた場所が襲撃されたような雑音は聞こえませんでしたし……」

 ブリッジでの全員の短い沈黙のあと、ウィルが考えられることを述べる。同時に、その後も呼びかけたがダメだったと伝えた。
「救助できる見込みは?」
「そうですね……」
ウィルが計算を始めようとすると、山口の後ろから、以下のような長く冷静な声がした。

「山口少佐、現在あのステーションの近くにいるのは我々しかいません。それに近くにいるといっても、この艦の最高ワープ速度で2時間45分もかかります。先ほどのステーション側との通信内容から考えますと、救援に間にあう確率は限りなく低いかと思われます」

 その冷静な声がしたほうを振り返ってみると、そこにはこの特殊部隊CROSSの副官であり、参謀担当の背の高い男が立っていた。
 彼はドイツ人で、ヘーゲルという名前だ。年齢は、やはり20代前半だ。

 山口は少し考えてから、この頭の堅い副官を諭し始めた。。
「……論理的に考えればそうだ。 しかし、救援要請を無視するわけにはいかないだろ?」
「ええ、わかっています。ただ私は、救援できる確率が低いと申しているわけです」
「たとえ彼らを救援できなかったとしても、早く到着するほど、その原因をわかりやすいだろう?」
「ステーションで未知の敵が、我々をを待ち受けていたとしたらどうしますか? 私は、他の部隊と合同でステーションに向かうべきだと思います」
「そんなことしてる時間の余裕は無いんだ! それに我々は、単独で未知の敵とも戦えるよう、訓練を受けてきたじゃないか! とにかくあのステーションに早く向かおう!」

 山口がそう言い切ると、ヘーゲルはあきらめがついたようで、ブリッジから静かに出ていった……。彼が出ていくと同時に山口は、操縦席の主任オペレーターのガリアに、
「最高ワープ速度で異次元ステーション『DW9』に向かえ。たとえワープエネルギーが切れたとしても、ステーションで補給が可能だからな」
「了解!」
快く返事したガリアは、少しだけ笑っていた……。論理主義のヘーゲルが、山口に言い負かされたのがおもしろかったようだ。

 山口たち特殊部隊『CROSS』を乗せた特務艦は、救援要請を発した異次元ステーションに向け、異次元空間を最高ワープ速度に突入して航行していった。
 ついさっきまで、異次元空間の「海」に、彼らの艦が通った跡ができていたが、ワープと同時にその跡は、プツンと途切れた。



      【 第1話 終わり 】

          つづく