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これは友人と一緒に旅行に行ったときの話だ。俺たちは近くに公園があるのを見つけ、暇つぶしに散歩をしてみることにしたのだ。そこは公園という名を冠してはいるものの、ほとんど森といってよく、一歩外れた道を行ったら戻れなくなりそうだった。しかし怖いもの見たさというのも手伝い、俺たちはどんどんと先へ進んでいった。
 ある程度進んで友人が声を上げた。
 「おい。むこうに何かあるぞ。いってみようや」
 そういって友人が指をさしたほうには、周りを木で囲まれた暗がりにぽつん、とひとつ池があった。
 「とは言っても何もなさそうだがな」といいながらも少し興味をひかれ、近づいてみることにした。
 「よくみろ、近くにエサ箱みたいのがあるぞ。なにかいるかもしれない」
 見ると池の隣にぼろぼろの箱が置いてあり、立て看板に一個百円と書かれている。エサが有料ということなんだろうが、周りに人気はなく、払わなかったとしても特に気づかれなさそうだ。
 「ほんとだ。でもどうせ鯉とかだろ」
 「いやいや、分からんぞ。こういうところにネッシーやらツチノコやらがいる可能性もゼロじゃないはず」そういいながら池の中をのぞきこんでいる。
 「お前はこの池に何を期待してんだ」
 俺は呆れながらもつられて何かいないかと池を見てしまう。池は黒く淀んでおり、生き物が住んでいる気配はない。
 「やっぱいねえって」
 そういって横を見ると隣に友人がいない。いつのまにかエサ箱の隣まで移動していた。
 「お前はこのエサ箱の存在を忘れている」と妙に作った声を出し、箱をぽんぽんと叩いている。「このエサを使いおびき出すんだ」
 「変にこだわるな」
 「だって考えても見ろ。こんな片田舎の怪しい池、近くにはいわくありげなエサ箱。なんかいそうじゃん」
 友人は喋りだしていくうちに、次第に目をらんらんとさせていく。そういえばこいつ超常現象とかオカルト系好きだったな、ということを思い出す。そんなことを考えていると彼はもう箱を開け、中身を取り出していた。そしてそのままエサをまこうとする。
 「おいおい、金払わなくていいのか?」俺はさすがにどうかと思い、声をかける。
 「なぜ俺は金を払わないのか? 理由はいくつかあるさ。未知の存在を発見できるかも知れないというときに百円なんて些細なことだ。大体俺はここに住んでいるであろう生物に対し、飯を与えようとしているだけだ。このことと食い逃げを比べたとしたら、俺のすることの方がはるかにいいじゃないか。それに今気づいたが俺は宿に財布を忘れたから払えない」
 俺は一気にまくし立てる言葉に驚き、彼の触れてはいけないスイッチを押してしまったことに気づいた。あわてて俺は彼を冷静にさせようとする。
 「金は俺が払っといてやるから、とりあえず落ち着け」
 「おぉ、悪いな」
 案外あっさりと普段の様子に戻り、安心した俺は金を箱に入れる。
作品名: 作家名:ト部泰史