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文殊(もんじゅ)
文殊(もんじゅ)
novelistID. 635
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むすひなんて、家には要らない。

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「こうして、イザナミがカグツチを産んで亡くなったことを怒ったイザナギは、カグツチを殺すんだな」
国語の授業というのは、つまらなくない。
だけれど、今の私はどこから見たって上の空にしか見えないだろう。
國美は、プリント上の文字をぼんやりと眺めて思った。
『子供を殺したって、奥さんが生き返るわけじゃないのに……』
回したシャーペンの芯が左手の指をかすったせいで、少し痛む。
國美の弟をこの世に産んで、母は亡くなった。
それと似たような話は、いろんなところに存在するのだ。
イザナギとイザナミという神の話を、一度くらい聞いたことがあるんじゃなかろうか。
大切な妻が、産んだ子のせいで死ぬ。
先生ははっきりと言わなかったけれど、カグツチは火の神だ。
産んだ時に陰部に火傷を負ったせいでイザナミは死ぬ。
そう言って、今の年代の学生が全員本気に聞く訳もないだろうし、と思って詳しくは言わなかったのかもしれない。
結局、怒ったイザナギは世に生を受けた子供を、殺してしまうのだ。
「殺された子供カグツチからは、多くの神が誕生した」
そういう行為を「むすひ」と言うのだ、と先生が口にすると同時に授業を終わらせる鐘が鳴る。
イザナギは、むすひを考えてまで子供を殺したのだろうか。
どうだっていいことだけれど、気分は重くなる。
ヒルコ、淡島、大八島……さまざまな神。
國美と弟。

母が亡くなって、國美の弟に名前を一人でつけただろう父。
名前はよほどのことがない限り、その人間が永遠に所有するものだ。
弟は、輝彦という名前がつけられた。
『かがやく、男……』
國美の勝手な深読みだけれど、嫌な感じがしてならない。
「輝く」というのは、かぐや姫なんかにもでてくるけれど「かぐ」というのに通じている。
そして、「輝彦」と重ねるあたりが本当に嫌だった。
どうしたって、恨んでわざわざ探してつけたようにしか思えない。
このことを思うたびに、國美は憂鬱な気持ちにならざるをえなかった。
誰にも言わない。
『だって、深読みのしすぎとしか思われないだろうし』
考えすぎじゃない、と言われるのはまっぴらごめんだった。
でも、友達の弟が似たようなことを言っていたのには、驚いた。

いや別に、友達の弟はカグツチになぞって名付けられた訳でもない。
そもそも、姉弟の母親は健在している。