Whats different from ...
でも、自分はそうじゃないってか。
まあ、確かに俺とユウのタイプは全然違う。
それは誰が見たってすぐにわかる。
「あのな、挨拶するやつ全員と仲良くなんてそんな聖徳太子ばりな真似できるわけないだろ」
「じゃあ、なんで・・・」
その質問に答えるのはすごく難しい。
「たぶん・・・人との距離のバランスをとるのが上手いほうなんじゃないか、とは思う」
「なにそれ?」
っていわれても、すごく感覚的なものだから説明するのはかなり難しい。
「どういうものかはよくわからないけど・・・挨拶しかしない友達だっているってことだよ」
「そんなの、意味あるの?」
「あるかもしれないし、ないかもしれない。でも人と知り合って、挨拶交わすのは悪い気はしないだろ。それとは別に心から安心して話せる人間は数人でいい」
「・・・よくわからない」
「まあいいけど」
「たぶん、僕には心から安心して話してくれる人なんていない」
「そんなことない。朝日、友達なんだろ?」
朝日は去年から同じクラスで友達だったはずだ。
「・・・確かに、僕の中では朝日が一番。でも朝日にとってはそうじゃない。朝日にとってはアキが一番だ」
「そんなの、わかんないだろ」
「見てればわかる。朝日でもアキでも僕は一番になれない」
・・・困った。
友達のランク付けってしちゃいけないことはわかってる。しないようにもしてる。
でもやっぱり、あるんだよな。
一番先に声かけにいくとか何かあったら真っ先に相談する友達とか、仲の良さは定規では測れないけれど、確かになんかのメモリは存在する。
「アキはいろんな人から一番にされてると思う」
俺は昔からいろんな人の相談役だし、理屈の通らないことは許せない性格だ。
高校になってもみんなの相談役ってポジションは相変わらずだけど、中学よりもお互いに頼れる人数は格段に増えた。
やっぱり、俺は相談を持ちかけられるだけよりも、お互いに困ったことを相談できる関係のほうが好きだし楽だ。
朝日なんかはその典型でお互いわかりあってる気がする。
きっとユウは俺たちのこういうところを敏感に感じてるんだろう。
そしてその次にくるのは疎外感。
ああ、なんでこいつが数日前の誘いを断ったのかようやくわかった。
「どうしたら、誰かの一番になれるかな」
半ばあきらめてる口調。
俺がどう答えるか迷ってる間に、オレンジの太陽はどんどん高度を下げていく。
それと比例するみたいに気温も下がって、学生服をしっかり着てても肌寒い。
春の風が芝生の中をすり抜ける。
「少なくとも俺は・・・本音をいってくれない奴を一番にはできないな」
風が強くなって、周りの木がさわさわと音を立てた。
さんざん答えに迷った末に出たのは一般論じゃなくて俺だったらっていう事例。
しかもあまりに当たり前のこと。
「ごめんな、こんな答えしかできなくて」
気まずさをごまかすみたいに、また日没前の風が木を揺らす。
「あー・・・でも」
俺の言いたいことをちゃんと伝えるためかのように、風が止んだ。
さわさわと音をたてていた木の動きがいっせいに止まる。
「だから、今みたいに思ってることをちゃんと言ってくれるユウはかなり好き・・・だな、うん」
恥ずかしいことを言ってるのはわかってる。
少し赤くなっただろう顔を夕日が誤魔化してくれるのを願うだけだ。
「だからさ、何でも言えばいいんだよ。俺なんて自分の考えてること黙ってられないだけだって。それがたまたま人と仲良くなるコツだったんだな、それだけだよ」
必死に言葉をつむぐけれども、ユウからの応答は無い。
また木がさわさわと音を立て始めた。
「 、 」
ユウが俺に向かっていっただろう言葉は、木のさざめきによって聞き取ることができなかった。
「ありがと、アキ」
でも、こっちの言葉が聞こえれば充分だ。
「こんなんでお役にたてたなら」
「わかっても僕にできるかどうかはわからないけど」
そういいながら、ユウは立ち上がった。
夕暮れ前の長い影はさらに長くなって、丘の外へと伸びる。
「そろそろ部活いきなよ」
「今何時?」
携帯を出すのが面倒で、腕時計をしているユウに尋ねる。
「もう5時半」
下校時刻の30分前。部活ではもう少ししたら片づけが始まる時間だ。
「もう今日はサボる。たまには一緒に帰ろうぜ」
立ち上がると自分の影も丘の外へと伸びた。
「サボるの?部長のくせに」
部長なんていえば聞こえはいいけど、ただの部活の取り仕切り役。
俺がいなきゃ誰かがやるだけだ。きっとその役割は間違いなく朝日だろうけど。
「今日は選択授業に日直だったって言い訳があるからいいんだよ。あとで朝日には連絡しとく」
朝日という名前を出した瞬間に表情が翳った。
そして丘の外へ影を追いかけるようにして歩き始める。
その後ろをついていく形で校舎裏を歩いた。
「おい、ユウ」
「なに?」
曇った表情はそのまま。
だから、振り向いた瞬間に肩を引き寄せて、唇を触れ合わせた。
「なっ・・・なにするんだよっ!?」
今まで見たことも無いほど、取り乱した。
「わからなかったならもう一回するか?」
反応が面白くて、つい挑発を仕掛けてしまう。
「そういうことじゃないだろっ!何考えてるんだよバカ!」
あのユウが顔を赤くして、怒ってる。
「ユウ、今の顔すげー高校生らしいぜ」
そういいながらにやりと笑ってやると、もう一度ユウが叫んだ。
「アキなんて嫌いだ!!」
「そう言ってくれるお前の方がずっといい」
鞄をもつのと反対の手で、一方的に肩を組んだ。
その手を振り払わなかったのが、きっとこいつの返事。
fin
ちょっとO型美化しすぎたw
ABの人って思ったことその場でそんなに言わないなって思って。
作品名:Whats different from ... 作家名:律姫 -ritsuki-