Whats different from ...
俺は、人とは違う。
誰も俺のことなんかわからない。
そんな風に思ってる奴がいる。
でも、俺は・・・
俺は、そんな奴が大っ嫌いだっ!!
・・・とまでは言わないけど。
まあ、そいつっていうのは同じクラスの北條裕(ホウジョウ・ユウ)。
別に普通の奴なんだけどさ。
クラスで浮いてる、とか友達がいない、とかいつも自分に浸ってる、とかそういうわけじゃないし。
むしろ友達とは上手くやってるほうだと思う。
俺は今年初めてこいつと同じクラスになった。
部活の友達が去年、ユウと同じクラスで仲が良くて、今年も同じクラスになったからなんとなく流れで俺も一緒にいる。
うぬぼれじゃないと思うんだが・・・俺は結構人のことをよくみてると思う。
だから、誰が誰を好きなのか、とか逆に嫌いなのか、とか。
そういうことをいち早く感知するのが昔からの特技だった。
だからまあ、自然といろんな奴の相談役なんてものもこなしてきたわけだ。
そして気づいてみれば頼られキャラ。
おせっかいな性格もそうして形成されていったものなんだろうと今ならわかる。
そのせいで今は陸上部の部長。
「アキ、どうする?」
アキって言うのは俺のこと。秋生祥(アキオ・ショウ)という名前からついた単純なあだ名。
そして誘われてるのは部活の無い今日これからなんか食いにいかないかという誘い。
誘っているのは部活の副部長で同じクラスの朝日。
「うん、行くか」
ていってるんだから、まあ普通に3人全員で行く流れだろ、と思いきや・・・
「僕はいいや、今日は帰る」
ってそれはねーだろっ。
「なんか用あるのか?」
「別に。じゃ、また明日」
鞄をもってゆっくり教室から出て行った。
「付き合い悪いなぁ・・・」
ついそう悪態をついてしまうと、俺と奴との共通の友達、朝日が苦笑いをした。
「ごめんな、あいつちょっとそういうとこあって」
ってなんで俺は何も悪くない朝日に謝らせてるんだよ。
「いいって。行こうぜ」
朝日と二人だけで教室を出た。
それから数日。
ぎっしりと6時間授業プラス選択授業の7時間目を終えたあとも残ってる日直の仕事。
日誌を書いて黒板を消して窓を閉めて電気を消す。
まだ新学期になったばかりの季節、電気が消えると西日が差し込んできた。
部活へ直行するために鞄を持って、日誌を1階の職員室に届ける。
その帰り、見覚えのある顔が窓の外を通り過ぎていった。
「あれ・・・ユウ?」
ちらりと時計を見て、まだ部活に行くまで時間の余裕があるのを確認してからユウを追いかける。
滅多に人が入らない校舎の裏をあるく。
学校をぐるりを囲む柵と校舎の間を歩いているわけだが、木が植えてあるだけのスペースだから狭い。
雑草は好き勝手に生えてるし、木の根っこは地面に張り出している。
上履きのままじゃかなり歩きにくい。
そんな理由もあり、なんだかタイミングを見失って声をかけられないまま。
ユウの足がぴたりと止まって、自然と自分も足を止める。
周りを見渡してみると、知らない場所だ。
「こんな場所、あったのか・・・」
たぶん今いるのは西玄関の裏あたり。
ここは校舎と柵との間が少しだけ広くなっていて、雑草の芝生は小さな丘のようになっている。
その小さな丘は木で囲まれていて、中にいるユウが何をしているのかは見えなかった。
「ユウ?」
その丘へと足を踏み入れる。
足を伸ばして芝生に座ってたユウがゆっくりと振り向いた。
「アキ、どうしたの?」
「いや、職員室に日誌届けに行った帰りに窓からお前の姿が見えたから」
「そっか」
そう言って前へ向き直ってしまった。
「なに見てるんだよ」
同じように足を伸ばして、隣へ座る。
「部活、いいの?」
「いいよ。今日は日直だから遅れるって言ってある」
なんなら自主トレだからいかなくても大丈夫だ。
「見てたんじゃないよ」
「え?あ、ああ」
さっきの答えか。いきなり話題転換するなよ。
「じゃあ、何してるんだ?」
「感じてるんだ」
「へ?」
「今の時期のこの時間」
「だから、何を?」
「夕日」
ああ、言われてみると暖かい夕日が差しこんでくる。
オレンジの光がまぶしく俺たちの影を伸ばす。
「確かに、綺麗だな」
これは部活をさぼるのに見合うくらいの価値がある。
「アキ、なんで僕のあと追いかけてきたの?」
突然の質問。
「見えたから」
それしか理由がない。
「見えたものは何でも追いかけるの?」
嫌味か、こいつ・・・。
「友達を見かけたら少し追いかけてでも声かけようと思うだろ」
ぶっきらぼうにそう言うとユウは少し笑った。
「羨ましい」
「は?なにが?」
「アキのそういうところ」
そういうところってどういうところだ。
見つけたものは何でもおいかけるとこってか?どこがだ。嫌味かっ。
「アキの友達はどこまで?」
「なんだよいきなり。別にそんなの境界線なんかないだろ」
「僕も友達に入ってる?」
「なんで今更そんなこときくんだよ」
「でも、さっき友達みかけたら追いかけるっていったよね」
ああ、それつながりの質問か。
話が飛びすぎなんだよ。
「好きじゃない人も友達に入るんだね」
なんだよ、それって・・・まるで俺が・・・
「アキは僕のこと嫌いでしょ」
本当にそう思ってるみたいじゃないか。
「別に、お前が嫌いってわけじゃないけど・・・」
「正直に言って」
きっと本音を言うなら、いまなんだろうな。
「自分は皆とは違う、みたいな顔してるのはちょっとどうかと思うときもあるっていうか・・・」
嘘をつくことはできなくて正直に言った。
俺って思ってること言わずにはいられないんだよな・・・。
自分の中でモヤモヤさせとくのって無理なんだよ。人に言って陰口みたいになるのもやだし。
まあ相手が怒るのは覚悟のうちだ。
「わからない」
「・・・は?」
怒られるでもなく、否定されるのでもなく、悲しがられるのでもない。
今までにない反応パターン、不思議がられる。
「アキにそう見られるんなら、きっと皆にもそう見られてるんだろうね」
「えっと・・違うのか」
「違う・・のかな、それもよくわからない。本当によくわからない」
って言われても俺にだってお前が何をいいたいのかちんぷんかんぷんだよ。
「まてよ、何がわからないのか、順を追って説明してくれ」
「どうしたらアキみたいになれるのか」
って順を追うもなにもないのかよ。
「なんだそれ」
「アキみたいにはなれない。誰とでも仲良く、楽しく高校生活なんてできない。友達の友達だからなんていう理由で嫌いな人と付き合うなんてできない」
これは、俺の生活態度に対する抗議なのか・・・?
それとも、こいつなりの悩み相談なのか?
「そういうふうに僕もなりたい」
ユウは真正面の夕日を見てて顔を見ることはできなかったけど、その言葉は嫌味や嘘には聞こえなかった。
こいつなりの悩み相談なのか。
それなら、慣れっこだ。
「別に俺だって誰とでも仲良くしてるわけじゃない」
「でも・・・そう見える。廊下に出ればいろんな人がアキと挨拶してる」
「それだって、全員じゃないだろ」
「そうだけど・・・あんなにたくさんの人と仲良く出来ないよ。アキって高校生の代表みたいだよ。友達が多くて楽しげで・・・すごく高校生らしい」
誰も俺のことなんかわからない。
そんな風に思ってる奴がいる。
でも、俺は・・・
俺は、そんな奴が大っ嫌いだっ!!
・・・とまでは言わないけど。
まあ、そいつっていうのは同じクラスの北條裕(ホウジョウ・ユウ)。
別に普通の奴なんだけどさ。
クラスで浮いてる、とか友達がいない、とかいつも自分に浸ってる、とかそういうわけじゃないし。
むしろ友達とは上手くやってるほうだと思う。
俺は今年初めてこいつと同じクラスになった。
部活の友達が去年、ユウと同じクラスで仲が良くて、今年も同じクラスになったからなんとなく流れで俺も一緒にいる。
うぬぼれじゃないと思うんだが・・・俺は結構人のことをよくみてると思う。
だから、誰が誰を好きなのか、とか逆に嫌いなのか、とか。
そういうことをいち早く感知するのが昔からの特技だった。
だからまあ、自然といろんな奴の相談役なんてものもこなしてきたわけだ。
そして気づいてみれば頼られキャラ。
おせっかいな性格もそうして形成されていったものなんだろうと今ならわかる。
そのせいで今は陸上部の部長。
「アキ、どうする?」
アキって言うのは俺のこと。秋生祥(アキオ・ショウ)という名前からついた単純なあだ名。
そして誘われてるのは部活の無い今日これからなんか食いにいかないかという誘い。
誘っているのは部活の副部長で同じクラスの朝日。
「うん、行くか」
ていってるんだから、まあ普通に3人全員で行く流れだろ、と思いきや・・・
「僕はいいや、今日は帰る」
ってそれはねーだろっ。
「なんか用あるのか?」
「別に。じゃ、また明日」
鞄をもってゆっくり教室から出て行った。
「付き合い悪いなぁ・・・」
ついそう悪態をついてしまうと、俺と奴との共通の友達、朝日が苦笑いをした。
「ごめんな、あいつちょっとそういうとこあって」
ってなんで俺は何も悪くない朝日に謝らせてるんだよ。
「いいって。行こうぜ」
朝日と二人だけで教室を出た。
それから数日。
ぎっしりと6時間授業プラス選択授業の7時間目を終えたあとも残ってる日直の仕事。
日誌を書いて黒板を消して窓を閉めて電気を消す。
まだ新学期になったばかりの季節、電気が消えると西日が差し込んできた。
部活へ直行するために鞄を持って、日誌を1階の職員室に届ける。
その帰り、見覚えのある顔が窓の外を通り過ぎていった。
「あれ・・・ユウ?」
ちらりと時計を見て、まだ部活に行くまで時間の余裕があるのを確認してからユウを追いかける。
滅多に人が入らない校舎の裏をあるく。
学校をぐるりを囲む柵と校舎の間を歩いているわけだが、木が植えてあるだけのスペースだから狭い。
雑草は好き勝手に生えてるし、木の根っこは地面に張り出している。
上履きのままじゃかなり歩きにくい。
そんな理由もあり、なんだかタイミングを見失って声をかけられないまま。
ユウの足がぴたりと止まって、自然と自分も足を止める。
周りを見渡してみると、知らない場所だ。
「こんな場所、あったのか・・・」
たぶん今いるのは西玄関の裏あたり。
ここは校舎と柵との間が少しだけ広くなっていて、雑草の芝生は小さな丘のようになっている。
その小さな丘は木で囲まれていて、中にいるユウが何をしているのかは見えなかった。
「ユウ?」
その丘へと足を踏み入れる。
足を伸ばして芝生に座ってたユウがゆっくりと振り向いた。
「アキ、どうしたの?」
「いや、職員室に日誌届けに行った帰りに窓からお前の姿が見えたから」
「そっか」
そう言って前へ向き直ってしまった。
「なに見てるんだよ」
同じように足を伸ばして、隣へ座る。
「部活、いいの?」
「いいよ。今日は日直だから遅れるって言ってある」
なんなら自主トレだからいかなくても大丈夫だ。
「見てたんじゃないよ」
「え?あ、ああ」
さっきの答えか。いきなり話題転換するなよ。
「じゃあ、何してるんだ?」
「感じてるんだ」
「へ?」
「今の時期のこの時間」
「だから、何を?」
「夕日」
ああ、言われてみると暖かい夕日が差しこんでくる。
オレンジの光がまぶしく俺たちの影を伸ばす。
「確かに、綺麗だな」
これは部活をさぼるのに見合うくらいの価値がある。
「アキ、なんで僕のあと追いかけてきたの?」
突然の質問。
「見えたから」
それしか理由がない。
「見えたものは何でも追いかけるの?」
嫌味か、こいつ・・・。
「友達を見かけたら少し追いかけてでも声かけようと思うだろ」
ぶっきらぼうにそう言うとユウは少し笑った。
「羨ましい」
「は?なにが?」
「アキのそういうところ」
そういうところってどういうところだ。
見つけたものは何でもおいかけるとこってか?どこがだ。嫌味かっ。
「アキの友達はどこまで?」
「なんだよいきなり。別にそんなの境界線なんかないだろ」
「僕も友達に入ってる?」
「なんで今更そんなこときくんだよ」
「でも、さっき友達みかけたら追いかけるっていったよね」
ああ、それつながりの質問か。
話が飛びすぎなんだよ。
「好きじゃない人も友達に入るんだね」
なんだよ、それって・・・まるで俺が・・・
「アキは僕のこと嫌いでしょ」
本当にそう思ってるみたいじゃないか。
「別に、お前が嫌いってわけじゃないけど・・・」
「正直に言って」
きっと本音を言うなら、いまなんだろうな。
「自分は皆とは違う、みたいな顔してるのはちょっとどうかと思うときもあるっていうか・・・」
嘘をつくことはできなくて正直に言った。
俺って思ってること言わずにはいられないんだよな・・・。
自分の中でモヤモヤさせとくのって無理なんだよ。人に言って陰口みたいになるのもやだし。
まあ相手が怒るのは覚悟のうちだ。
「わからない」
「・・・は?」
怒られるでもなく、否定されるのでもなく、悲しがられるのでもない。
今までにない反応パターン、不思議がられる。
「アキにそう見られるんなら、きっと皆にもそう見られてるんだろうね」
「えっと・・違うのか」
「違う・・のかな、それもよくわからない。本当によくわからない」
って言われても俺にだってお前が何をいいたいのかちんぷんかんぷんだよ。
「まてよ、何がわからないのか、順を追って説明してくれ」
「どうしたらアキみたいになれるのか」
って順を追うもなにもないのかよ。
「なんだそれ」
「アキみたいにはなれない。誰とでも仲良く、楽しく高校生活なんてできない。友達の友達だからなんていう理由で嫌いな人と付き合うなんてできない」
これは、俺の生活態度に対する抗議なのか・・・?
それとも、こいつなりの悩み相談なのか?
「そういうふうに僕もなりたい」
ユウは真正面の夕日を見てて顔を見ることはできなかったけど、その言葉は嫌味や嘘には聞こえなかった。
こいつなりの悩み相談なのか。
それなら、慣れっこだ。
「別に俺だって誰とでも仲良くしてるわけじゃない」
「でも・・・そう見える。廊下に出ればいろんな人がアキと挨拶してる」
「それだって、全員じゃないだろ」
「そうだけど・・・あんなにたくさんの人と仲良く出来ないよ。アキって高校生の代表みたいだよ。友達が多くて楽しげで・・・すごく高校生らしい」
作品名:Whats different from ... 作家名:律姫 -ritsuki-