ファンタジスタは闇を抱く
…… 今日から、ここで世界中のフットボール・プレイヤーが世界の頂点を奪い合う闘いを始める。最後は、この馬鹿みたいに巨大なスタジアムで世界一が決定する。
…… わたしの預かり知らぬところで多少の不正行為はあるのだろうという予感は、たしかに今までもあった。だが、まさか、この大会自体が不正行為そのものだったとは。
…… もちろん、わたしは不正行為など絶対行わないがな。ふざけるな。協会がどんな意向だろうと、世界のファンタジスタたちが率先して不正行為を行っていようと、わたしはわたしの正義を貫くだけだ。
彼はセンターサークルまで歩き、そこで膝をつき、人工芝越しに地面へキスをした。
妻は、この下に眠っている。…… 一時の過ちだったのかもしれない。だが彼女は、この国で絶対に許されない罪、姦通を犯した。だからわたし自身で彼女を裁いた。誰にも知られずにきみはここに眠っている。誰もがきみは今パリへ留学中だと思っている。その絶対的な孤独こそがきみへの罰だ。悪く思うなよ。…… だけど、もうすぐだからな。この大会が終わったら、わたしもきみの元へ行く。
作品名:ファンタジスタは闇を抱く 作家名:しもん