サヨナラ、ママ。
#04 「ドウカ ワタシナンテ イナイ ト オモッテ」。
唄うことは大好きだった。
寂しい時も悲しい時も
不安な夜も泣いたあの日も。
嬉しかった時も、いつも
私の隣りには歌がいてくれた。
唄うことは大好きだった。
でも。
ライブなんて考えたこともなかった。
小さい頃から家族の中で私は「透明人間」。
兄の友達からは何度、家に行っても一度も会ったことのない
「幻の妹」と言われて育った。
そんな「透明人間」の私は
人から注目されていると
察知した瞬間にシフトが降りる。
「ドウカ ワタシナンテ イナイ ト オモッテ」。
声が出ない。何も出来ない。
唄うことは大好きだった。
でも。
ライブなんて考えたこともなかった。
出来るワケないじゃん、そんなふうに
自分で自分を誤魔化していた。
でも、歌はいつも親友だった。
どんな時もどんな私も。
受け入れてくれる優しい親友だった。