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杜若 あやめ
杜若 あやめ
novelistID. 627
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自己責任の果て

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出社してすぐに、私は机の上の書類を見つけ私は胸中で舌打ちをした。
なぜだ、小学校からその大切さを教えるように、教育プログラムをくんであるのに、
新聞、雑誌、テレビ、インターネット、ありとあらゆるメディアで毎日宣伝をしているのに、
本屋に行けば、それについての本がいくつも平積みにされているのに。
どうしてこの国の人々に「自己責任」が根付かないのだろう。
「どうした、朝から暗い顔をして」
「みてくれ、また“作業”をしなくちゃならない。本当にどうして分かってくれないんだ」
そう言った私の肩を、同僚は気の毒そうにぽんぽんと叩いた。
「新しい常識が浸透するまではどうしても時間がかかるもんさ、それに
どうしても理解できない輩というのも存在する」
「そんなもんなんだろうか」
「そうさ、それに“作業”もなくなりはしないが、少なくはなっているだろう」
「まあ、確かにそうだが」
「成果は出ているんだよ。自信をもて。それに今日は視察団が同行するんだろ」
そうだった。最近急速に持ち直したわが国の経済を、欧州の代表者が視察にきたのだ。
私の背筋は急にピシリとのびた。国が一丸となってすすめている方針の推進員の一人として
疲れた顔など見せるわけにはいかない。
それをみて、同僚の顔にも笑みが浮かぶ
「その意気だ。がんばってこい」
私は頷いて、机から黒光りする重いものをひっぱりだし、肩にかついだ。
作品名:自己責任の果て 作家名:杜若 あやめ