自己責任の果て
出社してすぐに、私は机の上の書類を見つけ私は胸中で舌打ちをした。
なぜだ、小学校からその大切さを教えるように、教育プログラムをくんであるのに、
新聞、雑誌、テレビ、インターネット、ありとあらゆるメディアで毎日宣伝をしているのに、
本屋に行けば、それについての本がいくつも平積みにされているのに。
どうしてこの国の人々に「自己責任」が根付かないのだろう。
「どうした、朝から暗い顔をして」
「みてくれ、また“作業”をしなくちゃならない。本当にどうして分かってくれないんだ」
そう言った私の肩を、同僚は気の毒そうにぽんぽんと叩いた。
「新しい常識が浸透するまではどうしても時間がかかるもんさ、それに
どうしても理解できない輩というのも存在する」
「そんなもんなんだろうか」
「そうさ、それに“作業”もなくなりはしないが、少なくはなっているだろう」
「まあ、確かにそうだが」
「成果は出ているんだよ。自信をもて。それに今日は視察団が同行するんだろ」
そうだった。最近急速に持ち直したわが国の経済を、欧州の代表者が視察にきたのだ。
私の背筋は急にピシリとのびた。国が一丸となってすすめている方針の推進員の一人として
疲れた顔など見せるわけにはいかない。
それをみて、同僚の顔にも笑みが浮かぶ
「その意気だ。がんばってこい」
私は頷いて、机から黒光りする重いものをひっぱりだし、肩にかついだ。
なぜだ、小学校からその大切さを教えるように、教育プログラムをくんであるのに、
新聞、雑誌、テレビ、インターネット、ありとあらゆるメディアで毎日宣伝をしているのに、
本屋に行けば、それについての本がいくつも平積みにされているのに。
どうしてこの国の人々に「自己責任」が根付かないのだろう。
「どうした、朝から暗い顔をして」
「みてくれ、また“作業”をしなくちゃならない。本当にどうして分かってくれないんだ」
そう言った私の肩を、同僚は気の毒そうにぽんぽんと叩いた。
「新しい常識が浸透するまではどうしても時間がかかるもんさ、それに
どうしても理解できない輩というのも存在する」
「そんなもんなんだろうか」
「そうさ、それに“作業”もなくなりはしないが、少なくはなっているだろう」
「まあ、確かにそうだが」
「成果は出ているんだよ。自信をもて。それに今日は視察団が同行するんだろ」
そうだった。最近急速に持ち直したわが国の経済を、欧州の代表者が視察にきたのだ。
私の背筋は急にピシリとのびた。国が一丸となってすすめている方針の推進員の一人として
疲れた顔など見せるわけにはいかない。
それをみて、同僚の顔にも笑みが浮かぶ
「その意気だ。がんばってこい」
私は頷いて、机から黒光りする重いものをひっぱりだし、肩にかついだ。