戦場の兵士
砲撃だ!という声が辺り一面に響き渡り、砲弾が空気を切り裂く甲高い音がそれに続いて耳に襲いかかった。どうやら敵の支援砲撃がこの壕を発見してしまったらしい。やっかいだな、先日機関銃兵(マシンガンナー)が狙撃手(スナイパー)にやられて機関銃(マシンガン)ごとおさらばしたというのに。
明日には代わりの機関銃(マシンガン)が届くらしいが、今襲撃されてはひとたまりもない。
「おい、行くぜ。」
サムは俺の方を無遠慮に殴りつけると、壁に立てかけてあった手動装填式小銃(ボルトアクションライフル)を担ぎ上げた。機関銃(マシンガン)一座と小銃手(ライフルマン)100名足らず。何処まで持ちこたえられたものか。
「まったく、忙しいな。」
物入れから女の人の写真を拾い上げキスを交わしたカリスはそれを心臓に近い胸ポケットに入れると、手榴弾(グレネード)の数を確認した。カリスが持つ銃は俺が持つ物とは違い、黒光りする連射式(フルオート)の開放遊底(オープンボルト)型短機関銃(サブマシンガン)だった。カリスは俺たちより階級が一つ上なので、新開発された短機関銃(サブマシンガン)を優先的に配給されることになっている。
そのうち俺のような兵卒にも支給されるらしという噂だが、いつになることか。出来れば戦争が終わるまでに何とかしてほしい。
立ち上がり少し強張ってしまっていた膝や足首の関節を伸ばしながら、俺は二人に、この戦争はいつになったら終わるんだと聞いた。
「さあな、さっきいった戦争を起こす奴らが飽きたらだろう。」
面倒くさそうに鼻をほじった指で耳をほじり回しながらサムは前床(フォアグリップ)で肩をトントンと叩いていた。
「もしくは敵が降参したらだな。」
カリスは薄汚れたメガネを服の裾でサッと拭き取ると、最後のチェックとして短機関銃(サブマシンガン)から弾倉(マガジン)を抜きしっかりと弾丸が詰められているかを確認していた。
砲撃の轟音が少し遠ざかっていく、そろそろ俺たちの出番のようだ。
「今日も生き残ろうぜ!」
砲弾が飛ぶ音の後ろ側から何かが叫び声を上げてこちらに向かってくる。敵の歩兵集団がようやくお出ましのようだ。
俺はサムとカリスに銃剣先(バイヨネットトップ)を掲げ、三人でそれを打ち鳴らした。
俺たちの戦場に乾杯!!そして、この戦争を起こしたクソふざけた奴らに呪いを!!