戦場の兵士
今でも夢に見る、カリスの最後の表情。サムが吹き飛ぶ瞬間。それが毎晩毎晩同じ場面だけを繰り返す。
ようやく終戦処理が終わり、俺は本国へと帰された。戦争に負けたにもかかわらず、首都は戦争が始まる前の姿を保っており、帰還兵は暖かく迎えられた。
俺が伝説の狙撃手(スナイパー)を打ち落とした英雄として新聞に載っていたことには本当に驚かされた。だが、そこにはカリスとサムの名は載せられていない。俺は、新聞社に抗議をしたが聞き入れられなかった。
父は俺を誇りだといい、母は俺が死ななかったことに涙を流して喜んだ。
あの戦争はいったい何だったのか。俺は、暫く抜け殻のような生活を歩んだが、ついには答えを見つけることは出来なかった。少なくともあの戦争は俺が好きになった人間をことごとく奪い去っていったものだった。だが、誰を憎むことが出来るのか。敵兵か?敵国か?俺の命を救い、好待遇で保護したのは敵国だった。母国は俺を切り捨て、銃弾のように命を使うことしかしなかった。ならば、母国を恨めばいいのか?それも何か違う。
少なくともあの二人が命を掛けて守ろうとした母国を恨むのはお門違いだと俺には思う。
ならば、何を恨めばいいのか。
それから数年後、俺は英雄という立場を生かして官僚になることを決意した。
かつてカリスとサムと話し合った、戦争を起こす奴、そして戦争を起こさせないための方法を、俺は俺なりのやり方でそれをかなえようと思った。
故郷の村に春が訪れた。