『花摘人』
「よ、ルフト。」
聞き慣れた声がした。
振り返ると、そこにあったのは、やっぱり知った顔だった。
「……あんなぁ、ラズ。お前はほんま……。もう来んなーゆうたつもりやってんけど?俺。」
「言われた言われた。俺が聞かなかったことにしただけ。」
「うーわーさーいーてー。」
「うっせーよ、親友に向かって何たる言い草だお前。」
「ちょ、親友とかやめたって、痒い!」
そう言い返したルフトの言葉をけらけらと笑い飛ばし、ふわり、と羽を広げたラズワルドはルフトの隣に座る。
座ると同時に閉じた羽から、純白の羽根が舞う。
季節外れの雪のように、はらはらと舞う白。
ああ、これって人には見えへんねんなあ、もったいないなあ、と、ルフトはぼんやりと考えていた。
「……ルフト。」
「なんよ。」
「痛い?」
思わず、苦笑が零れた。
知っている。
この友人は、ルフトを心配して、わざわざここに降りたのだ。
「……はーあー、あんまし無様なとこさらしたないからもう来んなーてゆうたのにもー。」
「うーわ今更この人なんか言っちゃってますけどー。この俺相手にヘタな見栄張ろうとかしちゃってますけどー。」
「あーもーうっさいねん、アホが。」
笑い返すと、泣きそうになった。
こんな風に軽く言葉をかけるこの友人が、どれほど自分を心配しているか。
そんなことは解っていた。
「……痛いよ。……痛い。」
だから、そんな風に、弱音が零れた。
声が震える。
情けない。
もう、ラズワルドは、笑わなかった。
ラズワルドが、ルフトの傷ついた羽に手を伸ばしかけて、やめる。
ラズワルドに触れられれば、ルフトは痛い。
そして、ラズワルドに触れられた分だけ、ルフトの羽は朽ちてしまう。
「……アホやんなあ、俺。……っつーか、あれなんちゃうの。ラズは俺のこと止めなあかんのとちゃうの。」
「まあ、一応、名目上はな。……色々あんだよ、俺にも。」
「色々、ですか。」
「色々、ですよ。……なあ、ルフト。」
「ん?」
「これはさ、ただの御伽噺だ。」
御伽噺、その言葉にラズワルドを見返せば、ラズワルドの目は真剣だった。
口元にだけたたえた微笑と、真っ直ぐな視線。
それらがルフトの口を噤ませる。
「……まあ、ちょっとした、昔話だよ。暇つぶしにでも、聞いてくれ。」
そんな風に笑ったラズワルドは、ゆっくりと口を開いた。
聞き慣れた声がした。
振り返ると、そこにあったのは、やっぱり知った顔だった。
「……あんなぁ、ラズ。お前はほんま……。もう来んなーゆうたつもりやってんけど?俺。」
「言われた言われた。俺が聞かなかったことにしただけ。」
「うーわーさーいーてー。」
「うっせーよ、親友に向かって何たる言い草だお前。」
「ちょ、親友とかやめたって、痒い!」
そう言い返したルフトの言葉をけらけらと笑い飛ばし、ふわり、と羽を広げたラズワルドはルフトの隣に座る。
座ると同時に閉じた羽から、純白の羽根が舞う。
季節外れの雪のように、はらはらと舞う白。
ああ、これって人には見えへんねんなあ、もったいないなあ、と、ルフトはぼんやりと考えていた。
「……ルフト。」
「なんよ。」
「痛い?」
思わず、苦笑が零れた。
知っている。
この友人は、ルフトを心配して、わざわざここに降りたのだ。
「……はーあー、あんまし無様なとこさらしたないからもう来んなーてゆうたのにもー。」
「うーわ今更この人なんか言っちゃってますけどー。この俺相手にヘタな見栄張ろうとかしちゃってますけどー。」
「あーもーうっさいねん、アホが。」
笑い返すと、泣きそうになった。
こんな風に軽く言葉をかけるこの友人が、どれほど自分を心配しているか。
そんなことは解っていた。
「……痛いよ。……痛い。」
だから、そんな風に、弱音が零れた。
声が震える。
情けない。
もう、ラズワルドは、笑わなかった。
ラズワルドが、ルフトの傷ついた羽に手を伸ばしかけて、やめる。
ラズワルドに触れられれば、ルフトは痛い。
そして、ラズワルドに触れられた分だけ、ルフトの羽は朽ちてしまう。
「……アホやんなあ、俺。……っつーか、あれなんちゃうの。ラズは俺のこと止めなあかんのとちゃうの。」
「まあ、一応、名目上はな。……色々あんだよ、俺にも。」
「色々、ですか。」
「色々、ですよ。……なあ、ルフト。」
「ん?」
「これはさ、ただの御伽噺だ。」
御伽噺、その言葉にラズワルドを見返せば、ラズワルドの目は真剣だった。
口元にだけたたえた微笑と、真っ直ぐな視線。
それらがルフトの口を噤ませる。
「……まあ、ちょっとした、昔話だよ。暇つぶしにでも、聞いてくれ。」
そんな風に笑ったラズワルドは、ゆっくりと口を開いた。