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杜若 あやめ
杜若 あやめ
novelistID. 627
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愚痴をこぼす相手

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苦しみもがく夫を私は至極冷静な目でながめていた。
彼が死んだらサトコさんに報告しよう。
やがて動かなくなった夫のポケットから携帯電話が転がり落ちた。
何の気なしに拾い上げ、二つ折りの画面を開く。
画面の中にはパステル調のハート。見慣れた図柄。
これは、ソウルメイト。携帯からも見れるのだった。夫もやっていたのか。
パスワードは記憶されていた。
手馴れた手順でメッセージボックスにたどり着く。夫は誰と
どんな罪を告白していたの?
メッセージを開くと見覚えのある文章が目に飛び込んできた
「ねえ、サトコさん聞いて。旦那ったらバイト先の若い子と不倫してたのよ
ゆるせない」
なぜ、何でこれが夫のメッセージボックスにあるの。
震える手で次々と保存していたメールをあける
すべて、すべて私が送ったメールだ
サトコさんも嘘をついていた。
サトコさんがこぼす愚痴は、働かない夫。
男女を入れ替えれば、分かる人には分かる嘘。いえ、それは嘘ではなく。脚色。
私がやったのと同じこと。
急激に眠気が襲い掛かってくる。
どうして?今日は睡眠薬を飲んでいないのに
意識が途切れる寸前、私は最後にサトコさんに送ったメールの内容を思い出した
「サトコさんも旦那さんに嫌気がさしているんでしょ。
一緒に復讐しましょうよ。睡眠薬を飲んでいるなら簡単。
量を間違えて死んじゃうなんてよくある事故なんだから。
甘いものに混ぜれば、味だってごまかせますよ」
作品名:愚痴をこぼす相手 作家名:杜若 あやめ