愚痴をこぼす相手
「ねえ、サトコさん聞いて。旦那ったらバイト先の若い子と不倫してたのよ
ゆるせない」
震える手で私はキーボードを叩く。
だんなの帰りはますます不規則になり、私は不安になって興信所に駆け込んだ。
1週間後に請求書と一緒に送られてきた、ホテルへと入る夫と若い女の写真。
目の前が真っ暗になり、気がついたらパソコンの前に座っていた。
こんなこと、誰にもいえない。
サトコさんにしか。
「そう、裏切られたのね。かわいそう」
サトコさんの返事は優しくて私は涙が出てきた。
「・・・・・復讐、したくない?」
復讐?そうだ、復讐だ。私の完璧に幸せにしてくれなかった夫に復讐してやる。
サトコさんは夫がヘビースモーカーで大酒のみだと知っていた。
「お酒を飲むとね喉がとても渇くのよ。たまたま手に取った飲み物の中に
タバコの吸殻が入っていたという事故はよくあるの」
私は、夫が飲むミネラルウォーターの中にタバコを煮出した水を入れた。
色がついてしまったが、入っているビンの色が濃いのでわかるまい。
それに、飲むのはいつも泥酔してから。
ビンを冷蔵庫に戻し、私はほくそ笑む。夫が居なくなったら
私は又幸せを探しにいける。こんどこそ完璧な幸せを手に入れよう。
3日後、帰ってきた夫は珍しく上機嫌で私にケーキを買ってきた。
私たちは久しぶりに向かい合ってケーキを食べた。新婚時代に戻ったようで
ちょっぴり切ない。でも私の気持ちは決まっていた。
夫はやがてウイスキーを飲みだし、そして泥酔した。
ソファにひっくり返ってしばらく高いびきをかいていたが、やがてむっくり起き上がると
冷蔵庫のからミネラルウォーターを取り出し、一気にあおった。