空のかけら
「まもるくん。見て! 石の色」
「あ、ほんとだ」
あんなに真っ黒だった石の色が変わっている。日光が当たっていた部分が澄んだ青い色になっているじゃないか!
「空のかけら……」
麻衣がぽつりとつぶやいた。
そうだ。これは今ぼくが生きている地球の空の色。マモルの世界の黒い空でも、太陽の光でこんなにきれいな色になるんだ。
ぼくはふと、渡辺先生がいつも言っていることばを思い出した。
『あなたがたの子どもや孫、未来の子孫に胸を張って渡せる自然にするために、今できることからやりましょう』
胸の奥がきゅんと痛くなって、涙があふれてきた。ぼくはいつになく素直な気持ちになって、麻衣に言った。
「明日はまじめにやるよ。先生にもあやまる。それから信じてもらえないかもしれないけど、みんなにマモルのことを話す。今ならまだ間に合うんだって」
「うん。わたしも一緒に言う」
麻衣は涙をふいてにっこり笑った。なんだかその笑顔がすごくかわいらしく見えて、ぼくは一瞬どきっとした。
──マモル。君の願いをきっとかなえるよ。
君がぼくたちのように青い空の下で、サッカーとか野球が思いっきりできたらどんなにいいだろう。
風を切ってボールを追いかける守の姿を想像してみた。すっごく楽しそうな顔だ。
そう思ったら、なんだか本当にできそうな気がして、ぼくと麻衣は顔を見合わせた。
それで、空のかけらに誓いをしようと一緒に手を伸ばした。石は二人の手の中できらきら輝いている。
やがて全部が青くなった空のかけらは、ぱあっと砕けて、まるでシャボン玉のように、まだ暮れ残っている青い空にとけていった。