夏色のキス
俺の恋人は、透明だ。
太陽の光がキラキラしている下にいれば、本当に光の眩しさに眼を細めたくなる程に綺麗だ。
というのも、ユーレイだから。そう、お化けだ。あの夏とかに効果音では、どろろん~とかいって「うらめしやー」とかいうアレ。
ただ俺のコイビトは、見た目はフツーだ。ただし、顔はすごくかっこいい。
「なぁなぁ、触ってみていい?」
――あのな、ユーレイは透明なんだ。触るとか、そういうのは無理だぞ
「うー、さわりてぇ」
―――触れるもんなら、触ってみろ。ほら、ほらほら。触りたいなんて、ませたカギだな
手を動かして、俺を挑発しやがる。こんにゃろー。絶対に触ってやる。そんな風に思うが、俺が手を伸ばしても、宙をかすめるだけで、コイビトに触れない。
俺が、この意地悪なコイビトとであったのは、小学生のときだった。虫取り網もって森の中を彷徨っていて、迷子になった俺は、夜になっても帰れなくて、えんえんとないていた。そのとき、このコイビトは――夜人は、突然に夜の中にあらわれると、俺を森の出口まで導いてくれた。
つまりは恩人だ。
そのとき、両親はすごく心配して、俺をしっかりと抱きしめてくれた。森で迷子になっていたのを助けてもらったというと、祖父は、森神様が助けてくれたんだといって翌日、俺を伴って森の神社にお礼にいった。けど、あれが神様? なんかしっくりこねぇーと思いながら、森の中にやっぱり迷子になっていたら
――お前、馬鹿だろう。一度迷子になって、また迷子になるか? 学習能力ねぇやつ
そのとき、俺は確信した。
こいつは、絶対に神じゃない。こんな口の悪い神がいていいものかっ!
二十代くらいで、高い背に整った顔立ちが、男の俺から見てもかっこいいと思える人だった。
夜人と名乗って、この山で自殺して、そのまま彷徨っているのだといっていた。つまるところ、ユーレイ。俺は、びびった。マジでびびった。だけど、段々と俺は夜人に慣れていった。それは、いわゆる懐くといってもいいくらい。俺は夜人に懐いた。夜人はいろいろと知っていて、俺にいろんなことを教えてくれた。頭がいいから、数学とか教えてもらったり、夏は夏で宿題を手伝ってもらった。
好き。
俺は、いった。高校一年のときだった。出会ってから、もう長い時間がたっていた。懐いていた子供である俺は、既に夜人と同じ位の背丈になっていて、夜人にたいする気持ちは、恋になっていた。本当に色にたとえたら、色のない。透明な、そう、夜人と同じようなほどに見えない気持ちだった。けど、俺は夜人が好きだということだけは、はっきりとわかった。
夜人は笑った。
じゃあ、コイビトになるか?
そして、俺と夜人はコイビトになった。
俺と夜人以外は、きっと誰も知らない。二人だけの秘密。コイビトであるという秘密。
俺には、夜人にいっていな秘密がある。それは、夜人が大好きだということだ。コイビトになっても伝えきれない程に、俺は夜人が好きだ。
夜人のいいところを俺は、十以上あげられる。悪いところも同じ位。けど、好きだ。
夜人にはいえない。
俺の持つ秘密。
夜人は、遠くをみていた。
俺は、なにをみているのかと視線を向ける。
「なぁ夜人」
触りたい。
俺は、この自慢のコイビトに触りたい。
夜人は変わらない。
俺は、もうこんなにも立派になった。はじめは、夜人のことを俺は「お兄ちゃん」とよんでいたのに。今では、夜人と呼ぶくらいになった。背丈でも俺はがたいがよくなって、夜人を高校三の春のときに抜いた。声変わりもした。
けれど、夜人はかわらない。
きっと、俺がこれからずっと成長しても、夜人はずっと、夜人のまま。その姿のままなのだ。
それがたまらなく寂しい。
ユーレイである夜人には俺は触れることもできない。
ただ眼で、きれいだなとみるぐらいしかできない。
俺は、夜人に触れたい。触れて、いいたい。好きだと、好きで、好きで、たまらなく好きだと。
これが、俺の秘密。
――もうすぐ、お前、都会の大学いくんだろう?
「え、あ、うん」
大学は、既に都会のほうに決まっている。それを気に俺は一人暮らしをするようにすすめられた。
――よかったな
「えっ」
俺は、なんていうべきか迷った。なにがよかったのだろう。
俺が都会に出たら、もう頻繁に夜人にあえなくなる。それがよかった。ことなのだろうか?
――ここは、寂しいところだ
「夜人」
――若いガキがいるところじゃないんだよ
「夜人、なんだよ、それ」
――都会いって、いい女みつけろよ。あ、男好きなら、男でもいいぜ
「夜人っ!」
俺は怒鳴った。
なんで、そんなことを笑いながらいうんだ。こいつは。
それは、つまりは……
「夜人は、俺が都会に出て、もう戻ってこなくていいっていたいのか? そりゃあ、都会出たら、そのまんまかえらないやつ多いけど、俺、いつもかえってくるぜ。夏休みとか、冬休みとか」
――お前、ガキじゃないんだ。俺がどういうものかわかってるだろう
「知ってるよ。ユーレイで、俺のコイビトだ」
――俺は、生きちゃいない。お前はこの何年で、めまぐるしいほどに成長した。けど、俺は、かわらない
「夜人」
――変わらい、触れれないコイビトと一緒にいて幸せか? そんなことをいうのは、理想主義者だ。お前は、今を生きろよ。
「やだ、やだっ! 夜人っ」
俺は、がむしゃらに叫んだ。
けど、夜人は笑うだけで、何も言わずに首をふる。
なんで、そんな風に納得できるんだろう。コイビトだろう。俺達?だったら、なんとかしようと思わないのか?
なんとかできなくても、なんとかしようと。
――俺にとって、お前とコイビトなのって、暇つぶしみたいなもんだしよ。ずっと続くわけないんだよ。人なんてかわる。お前だって、都会にでたら、わかるさ。自分がどれだけ小さな世界にいきて
「夜人っ!」
俺は怒鳴った。
「それ以上、いったら俺も怒るぞ」
――……お前に触れたい
夜人の刹那な声に俺は震えた。
――俺は、お前に触れたい。キスしたい、抱きしめたい。けど、できないんだ。どんなに手をのばしても、お前に触れれない。触れることができないんだよ。
夜人が手を伸ばす。けど、触れることはできない。
すかっと、なんだか、生暖かい風ばかりが俺の肌を撫でつける。これが現実なんだ。俺は息を呑む。
――わかるか、これが現実なんだ
夜人の顔が歪む。
いやだ、と俺は言葉を漏らす。
「夜人っ」
俺は、このとき、夜人のためにだったら、死んでもいいように思えた。
好きだと、言葉が漏れ出そうとしているのが分った。好きで、好きで、たまらなく好きなんだ。そして、夜人も、そうなんだ。
触れたい。
抱きしめたい。
キスしたい。
けど、できない。することはできない。
「夜人、夜人っ」
俺は、夜人のきらきらと輝く手に、手を添える真似をした。
――お前がかわっていくのを見るのは、もう耐えられない。お前が、俺の目の前で誰かを好きになって、どんどんとかわっていって。俺を置いていくの。だから、俺はもうお前の目の前には出来ない
「やっ」
太陽の光がキラキラしている下にいれば、本当に光の眩しさに眼を細めたくなる程に綺麗だ。
というのも、ユーレイだから。そう、お化けだ。あの夏とかに効果音では、どろろん~とかいって「うらめしやー」とかいうアレ。
ただ俺のコイビトは、見た目はフツーだ。ただし、顔はすごくかっこいい。
「なぁなぁ、触ってみていい?」
――あのな、ユーレイは透明なんだ。触るとか、そういうのは無理だぞ
「うー、さわりてぇ」
―――触れるもんなら、触ってみろ。ほら、ほらほら。触りたいなんて、ませたカギだな
手を動かして、俺を挑発しやがる。こんにゃろー。絶対に触ってやる。そんな風に思うが、俺が手を伸ばしても、宙をかすめるだけで、コイビトに触れない。
俺が、この意地悪なコイビトとであったのは、小学生のときだった。虫取り網もって森の中を彷徨っていて、迷子になった俺は、夜になっても帰れなくて、えんえんとないていた。そのとき、このコイビトは――夜人は、突然に夜の中にあらわれると、俺を森の出口まで導いてくれた。
つまりは恩人だ。
そのとき、両親はすごく心配して、俺をしっかりと抱きしめてくれた。森で迷子になっていたのを助けてもらったというと、祖父は、森神様が助けてくれたんだといって翌日、俺を伴って森の神社にお礼にいった。けど、あれが神様? なんかしっくりこねぇーと思いながら、森の中にやっぱり迷子になっていたら
――お前、馬鹿だろう。一度迷子になって、また迷子になるか? 学習能力ねぇやつ
そのとき、俺は確信した。
こいつは、絶対に神じゃない。こんな口の悪い神がいていいものかっ!
二十代くらいで、高い背に整った顔立ちが、男の俺から見てもかっこいいと思える人だった。
夜人と名乗って、この山で自殺して、そのまま彷徨っているのだといっていた。つまるところ、ユーレイ。俺は、びびった。マジでびびった。だけど、段々と俺は夜人に慣れていった。それは、いわゆる懐くといってもいいくらい。俺は夜人に懐いた。夜人はいろいろと知っていて、俺にいろんなことを教えてくれた。頭がいいから、数学とか教えてもらったり、夏は夏で宿題を手伝ってもらった。
好き。
俺は、いった。高校一年のときだった。出会ってから、もう長い時間がたっていた。懐いていた子供である俺は、既に夜人と同じ位の背丈になっていて、夜人にたいする気持ちは、恋になっていた。本当に色にたとえたら、色のない。透明な、そう、夜人と同じようなほどに見えない気持ちだった。けど、俺は夜人が好きだということだけは、はっきりとわかった。
夜人は笑った。
じゃあ、コイビトになるか?
そして、俺と夜人はコイビトになった。
俺と夜人以外は、きっと誰も知らない。二人だけの秘密。コイビトであるという秘密。
俺には、夜人にいっていな秘密がある。それは、夜人が大好きだということだ。コイビトになっても伝えきれない程に、俺は夜人が好きだ。
夜人のいいところを俺は、十以上あげられる。悪いところも同じ位。けど、好きだ。
夜人にはいえない。
俺の持つ秘密。
夜人は、遠くをみていた。
俺は、なにをみているのかと視線を向ける。
「なぁ夜人」
触りたい。
俺は、この自慢のコイビトに触りたい。
夜人は変わらない。
俺は、もうこんなにも立派になった。はじめは、夜人のことを俺は「お兄ちゃん」とよんでいたのに。今では、夜人と呼ぶくらいになった。背丈でも俺はがたいがよくなって、夜人を高校三の春のときに抜いた。声変わりもした。
けれど、夜人はかわらない。
きっと、俺がこれからずっと成長しても、夜人はずっと、夜人のまま。その姿のままなのだ。
それがたまらなく寂しい。
ユーレイである夜人には俺は触れることもできない。
ただ眼で、きれいだなとみるぐらいしかできない。
俺は、夜人に触れたい。触れて、いいたい。好きだと、好きで、好きで、たまらなく好きだと。
これが、俺の秘密。
――もうすぐ、お前、都会の大学いくんだろう?
「え、あ、うん」
大学は、既に都会のほうに決まっている。それを気に俺は一人暮らしをするようにすすめられた。
――よかったな
「えっ」
俺は、なんていうべきか迷った。なにがよかったのだろう。
俺が都会に出たら、もう頻繁に夜人にあえなくなる。それがよかった。ことなのだろうか?
――ここは、寂しいところだ
「夜人」
――若いガキがいるところじゃないんだよ
「夜人、なんだよ、それ」
――都会いって、いい女みつけろよ。あ、男好きなら、男でもいいぜ
「夜人っ!」
俺は怒鳴った。
なんで、そんなことを笑いながらいうんだ。こいつは。
それは、つまりは……
「夜人は、俺が都会に出て、もう戻ってこなくていいっていたいのか? そりゃあ、都会出たら、そのまんまかえらないやつ多いけど、俺、いつもかえってくるぜ。夏休みとか、冬休みとか」
――お前、ガキじゃないんだ。俺がどういうものかわかってるだろう
「知ってるよ。ユーレイで、俺のコイビトだ」
――俺は、生きちゃいない。お前はこの何年で、めまぐるしいほどに成長した。けど、俺は、かわらない
「夜人」
――変わらい、触れれないコイビトと一緒にいて幸せか? そんなことをいうのは、理想主義者だ。お前は、今を生きろよ。
「やだ、やだっ! 夜人っ」
俺は、がむしゃらに叫んだ。
けど、夜人は笑うだけで、何も言わずに首をふる。
なんで、そんな風に納得できるんだろう。コイビトだろう。俺達?だったら、なんとかしようと思わないのか?
なんとかできなくても、なんとかしようと。
――俺にとって、お前とコイビトなのって、暇つぶしみたいなもんだしよ。ずっと続くわけないんだよ。人なんてかわる。お前だって、都会にでたら、わかるさ。自分がどれだけ小さな世界にいきて
「夜人っ!」
俺は怒鳴った。
「それ以上、いったら俺も怒るぞ」
――……お前に触れたい
夜人の刹那な声に俺は震えた。
――俺は、お前に触れたい。キスしたい、抱きしめたい。けど、できないんだ。どんなに手をのばしても、お前に触れれない。触れることができないんだよ。
夜人が手を伸ばす。けど、触れることはできない。
すかっと、なんだか、生暖かい風ばかりが俺の肌を撫でつける。これが現実なんだ。俺は息を呑む。
――わかるか、これが現実なんだ
夜人の顔が歪む。
いやだ、と俺は言葉を漏らす。
「夜人っ」
俺は、このとき、夜人のためにだったら、死んでもいいように思えた。
好きだと、言葉が漏れ出そうとしているのが分った。好きで、好きで、たまらなく好きなんだ。そして、夜人も、そうなんだ。
触れたい。
抱きしめたい。
キスしたい。
けど、できない。することはできない。
「夜人、夜人っ」
俺は、夜人のきらきらと輝く手に、手を添える真似をした。
――お前がかわっていくのを見るのは、もう耐えられない。お前が、俺の目の前で誰かを好きになって、どんどんとかわっていって。俺を置いていくの。だから、俺はもうお前の目の前には出来ない
「やっ」