小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

Awtew.2 (e-r) 1

INDEX|19ページ/34ページ|

次のページ前のページ
 

  1


「そういえば、歩香ってなんで絵を描いているんだ?」
 セキから尋ねられた。人が描いているのに、そんな哲学的な話を訊くのはどうかと。
「描きたいから」
 安直にボクは答え、再びペンを走らせる。今日の構図はもう決まった。
「じゃあ、何で描きたくなるんだ?」
 さらに踏み込まれた。またペンが止まってしまう。
「そんなに理由が欲しいの?」
 ボクは少し苛立ちながら、その質問を返した。
「いや、あったら教えて欲しいな、と思ってさ」
「ない」
「……そっか」
 少ししょんぼりした顔になる彼。脳内イメージが少しずれる。
 『今日のセキの絵』の構図に合わない。ペンは止まったまま。
 ボクはしょうがなく、ぼそりと、セキに問いかけた。
「…………今を明日に残したい、って思ったことは無い?」
「……え?」
 セキは聞こえなかったらしく、ボクに再び聞き返す。
「二度は言わないよ」
「え〜〜」
 不満げに口答えするセキ。
「聞いていなかったのが悪いのっ」
「聞こえるように言ってなかったのに?」
「む」
 そう言われたら反論できない。しょうがなく、ボクは『前とは違うこと』を言った。
「今あることを描きたいって思ったから」
 不意に出た本心を隠すために。
「……そっか。でも歩香って、よく『今』にこだわるよね」
「……まぁね」
セキが言ったもう少しでボクに触れられそうな言葉を、ボクは流した。


作品名:Awtew.2 (e-r) 1 作家名:犬ガオ