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満月ロード

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「先日の戦い、途中で魔術を数個使っていたが、最後の魔術はなんだ」
「え?」
「あんな魔術は聞いたことも見たこともない」
 
 ドラゴンに使用したルーフォンの魔術も初めてみたよ。
 と、言いたいのは山々だが、今はそれよりもあの時見せた、水の魔法だろう。
 ルーフォンが好んで使用する炎系があまり好きではない。だからこそ、水の魔術や魔法を必死に覚えた。あまり数多くはないが、魔法に関してならば、ほとんどの事ができると言っても過言ではないくらい、鍛え上げた。その結果があの“偽魔術”。
 いつかは聞かれるだろうと思っていたが、何の答も用意していない今、言葉が詰まってしまう。

「あ…れは…。言っただろう? 開発したって」
「そう簡単に開発なんかできないし、威力の割に詠唱時間が短い。どういうことだ? 是非教えてほしい」
「本当にあれは勘だったんだって。切羽詰まってたし(言葉も詰まってるけど…)」
 
 なんてごまかしは効かないのだろうか。
 そんなに威力を上げたつもりはないのだが、魔術にしては強すぎただろうか。いろいろ考えているうちに、頭痛がしてくる。アマシュリにバトンタッチをしたかったが、人間の飲み物が気に入ったのか、いろいろなものを空けては会話も聞かずに、次のものを開けていた。

「…そうか。だが、ドラゴンと戦っているときも、最後の重力魔術。初歩的な魔術しか使えないと思っていたが、他の魔術を知っているのならば、どうして試合中使用しなかった。俺の時だけじゃない。他の試合だって、本気でやりあっていない」
「だって…。魔術で傷つけたらかわいそうだろ…」
 
 何とも言えない質問をされて、とっさに答えた言葉に、アマシュリは口に含んでいた飲み物をふきだした。
 俺だって笑いたい。笑いこけたいのは山々だ。
 だが、単純に 「本気でやりあったら、やり合いではなく、一方的な殺戮になっちまう」 なんて言ってみろ。不審がられるにきまっている。もしくは、 「その一方的な殺戮となってもいいから、本気で俺と戦え」 なんて、ルーフォンの場合言いそうだ。

「お前…結構バカなんだな」
「うるせっ」
「ぶあぁっはっはっ。もう駄目笑いが止まらない…」
 
 呆れたルーフォンにプチっときた俺、笑いが止まらないアマシュリ。
 いやだと言っても、ルーフォンはついてくるだろうし、この三人で人間の土地を旅する事を考えると、だんだん“勇者”から身を引きたくなってきた。


作品名:満月ロード 作家名:琴哉