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モノガミものぽらいず

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すずめ☆実況解説 3



 ラジオから流れる気象情報。どうやら台風が近づいているらしい。
 確かに窓の外は暗く、空は鉛色。窓ガラスも強風でカタカタ軋んどる。
 研究室の中にはウチだけが居て、これまでの情報の整理と、そこから導き出された結果から、今後の研究で必要んなるやろ、っちゅう機材の改造を行っとる。
 と――
「雀!」
 不意に研究室の引き戸が開かれ、聞き覚えのある声が無遠慮にウチの名を呼んだ。
「やかましいで! なんやねんっ? ウチ今いそがしいねん!」
 顔を上げると、その先には声の主――秋月の姿が在る。
 が、その貌は、見たこともないくらい、切羽詰ったものやった。
「ハクビここに来てねぇか?」
「いや……来てへんけど……って! ちょっと待ちぃな!」
 ウチの返答を聞いた刹那に飛び出していこうとする秋月。ウチは即座に駆け寄って、その腕を掴んだ。
「相談なら聞くで? 話してみぃ」
 しかし秋月は、腕を振り解いた。
「そんなヒマねぇんだよ! 台風来てるってのに! これから探しにいかなきゃなんねぇ! ったくあのバカ!」
 どこか悲痛な面持ちで、秋月がまたも走り去ろうとする。ウチはそんな秋月に抱きついて、全身で引き止める。
「慌てんなアホぅ! せやったら尚更や、事情話さんかい! ウチも一緒に探したるから!」
 怒りと焦りと悲しみ――そないなものをない交ぜにして、秋月がウチの顔を見据えてくる。

 ウチは、秋月から一通の手紙を渡され、目を通した。
 ――ハクビちゃん、そんなに悩んどったんか――
「なぁ秋月、ちょっと」
 隣のパイプ椅子に腰掛ける秋月。ウチに促され、その顔が近づく。
 刹那、
 ごす!
 ウチはその頭に拳を見舞った。
「……ってぇなコラ! なにしやがんだよっ?」
 目を丸くして、青筋立ててる秋月。
 しかしウチは、そんな文句に耳は貸さへん。
「……あんた、ハクビちゃん居ぃひんくなって、で、ほんまに探したいんか?」
「現にこうして探してんだろうが」
「なんでや? 探し出して、どないすんねや? 大体、あんたハクビちゃん、どない思とんねん? ペットか? タダの同居人? それとも、可哀想やから置いてやっとる動物か?」
 一瞬の沈黙。でも――
「……かんねぇよ。そんなの……でも、あいつがあのハクビなら……放ってはおかない。あいつは……もう居場所がねぇんだ。ばっちゃん、死んじまって、だから……」
 ウチは溜め息を吐いた。せやから、ウチは言ぅたんや。独身貴族まっしぐらやて……
「……じゃあ、これだけ聞かせぇや。……あんた、ハクビちゃんは、大切なんか?」
「……ああ」
「人の姿んなったら、嬉しいか?」
「ああ、そうだな」
 強く、
 そしてしっかりと、
 秋月は頷いて見せた。
「……分かった。んじゃ、あんたも手伝いぃ。これから死んだっちゅうあんたのばぁちゃんの、メッセージ印刷するわ。それから、あんたにやった、ヨミステールくんも改造するさかい」
 言って、ウチはさっきまでの作業を再開した。量子コピー機『いんすぱいあチャン』。コイツを改造して、平行世界のメッセージを引き出せるようにするねん。そして、ヨミステールくんで、秋月に最後のチャンスを作ったる。