ひとりかくれんぼ/完結
5月25日02:55(火)
★5月25日02:55(火)
そういえば、ひとりかくれんぼやりたいって拍手来てましたけど…そりゃあ、もうね、自己責任で。ちなみに個人的には、あれよ、神経過敏状態になってなんか幻聴が聞こえるんじゃね?的な風に思いますお(キリッ)こういうオカルティックな話ってファンタジックとロマン!信じるかどうかは別として、夢のある話だなあとは個人的に思っています。っつー訳で、夢は夢のまま、ロマンはロマンのまま、残しておいておいた方がいいんでね?っていうのが私の意見ですとだけ。
サチと私は、26日の夜中、2時にお互いの家を出る約束をした。
私の親は怖いので、窓からそっと。サチの親は色々なことに寛大らしく、そんな必要はないらしい。2人で学校の前で落ち合って、井坂サンのお兄さんの家の前に集合。ひとりかくれんぼ開始だ。
「なんかワクワクしてきたー!超楽しみ」
サチの機嫌はいいが、私は昨日のマックでの電波の件が気がかりで仕方なかった。本当を言うと、夜も怖くて電気を消せなかったほど。しかし私の神経は思ったよりも図太いのか、そのまま眠ってしまっていたけれども。
井坂サンはすでに準備万端なようで、今日は学校に、かくれんぼに使うぬいぐるみを持ってきて、私たちに見せた。小型のテディベアだ。彼女が言うには、そのテディベアは小さい時からの持ち物らしかった。
「昔からの持ち物の方がハイり易いと思うんだよね」
彼女はそう笑って、サチもそれはいいと褒めていたが、私はやはり気味が悪かった。
そのテディベアの綿を抜いて、米を入れて、赤い糸を巻きつけて、刺す。現物を前にすると、妙にかわいそうになる。それでも彼女らは楽しそうだ。この温度差が、更に気味を悪くさせている。とは思うものの、なんだかんだで興味のある私。止める気は、なかった。何か起こっても、そうよね、唆したのはサチだし、やるのは、井坂サンだし。私は性格が悪いのだろうか。
井坂サンはテディベアともう一つ、携帯の画面を私に見せてきた。
「何これ」
「で、後ね、2ちゃん見つけたの。現行スレ。僕、ここでついでに実況するよ」
そこはサイトで見たような書き込みがなされている。私とサチはいまいち分からない。
「実況って、あの、まとめサイトで見たみたいな?」
「うん、写メとかアップして、リアルタイムで見るみたいな。そうしたら、君たちも確認できるし、検証例も増えるし。ビデオカメラも借りれたから、動画も撮ってニコニコに上げようと思う」
井坂サンは他にも色々言っていたが、サチも私は、やはりよく分からなかった。私たちが首を傾げ続けているのを見兼ねてか、井坂サンは、とりあえずここ見ておけば自分の状況が分かるからと言って、私とサチにメールでそれのURLを送ってくれた。
「そこに0時くらいから色々書き込む。ナナって名前でやるから」
まあよく分からないけれど、とりあえず、井坂サンがナナって名前で、それでここを見ておけばいいらしい。サチは説明が長いためか、飽きてしまったようで、私の服の袖を引いて帰りたがった。
「分かったよ。オッケー、じゃあ、また2時に!」
そう言って、なんだかよく分からない説明から逃げた。
途中すぐにサチが私に囁いた。
「うわ、超オタクだね、やっぱ。きも」
「でもやらせるんでしょ?」
「まあーそーだけどー。終わったらそっこー縁切ろ。今私たちのこと、仲間とか思ってんのかな?気持ちわるっ」
サチは面白そうに笑った。私は、そうだね、と控えめに笑った。
サチは、怖い。
作品名:ひとりかくれんぼ/完結 作家名:笠井藤吾