ひとりかくれんぼ/完結
言葉を濁した愛川に、舌打ちを打つと、愛川が肩をびくりと震わせた。いいから言えよな、時間ないから。
「あの…確証はないんですが、霊能力者さんが、ななみサンが変なことするからいけないって言っているんです」
「変なこと?なにそれ」
「それが…」
返答を待たずに、デスクトップのパソコンを覗き込むと、ひとつの書き込みが目に付いた。
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921 2010/05/28(金) 04:03:50 ID:pb9Td/ZwO
名前:
どうせ自称霊能力者乙とか言われるだろうけど、
書いておくよ。
>>903
ナナは正規の手順踏んでない気がする。
すごく禍々しいものを感じた。
特に人形がやばい感じがした。
何か変なことしてんじゃね?
本人いないから確認できないけど。
お兄さんがどうしてそうなったのかは
よく分からないけど、
すごく危険だから、ものすごく注意して。
消えた一人だけど、死んでるんじゃないか?
怨念が電波介して感じ取れるレベル。
お隣さんは、壁際に塩盛っておいた方がいい。
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正規の手順を踏んでないって、どういうことだ?あの方法のページに書かれたことと別のことをしてるってことか?意味が分からんが、井坂にはそう伝えておくとしよう。しかし死ぬとか物騒だな。それはそうと、だ。
「愛川」
「は、はいっ」
愛川の顔は先程よりもっと青ざめていた。恐らく「死」という言葉に恐怖を覚えたんだろう。しかし、自業自得であると切り捨てて、言う。
「皿は適当なの使って、塩持っておいて。ついでにやり方ぐぐること。それで、引き続き、スレで情報集めろ。俺は隣行ってくる。何かあったら呼べ。塩が優先事項だからな」
「はい…」
冗談じゃない。とばっちりなんぞ受けてたまるか。
愛川に指示を出して、俺は廊下を歩き、サンダルを履いた。愛川が、後ろからついてきて、小さいキッチンをキョロキョロと見回していた。
「塩は戸棚右。食器は下。あと塩こぼさないように」
「はい」
サンダルを履きながらそういうと、愛川はぱっと動く。小動物みたいだ。愛川を視界の片隅で見ながら、外に出た。
作品名:ひとりかくれんぼ/完結 作家名:笠井藤吾