They go on each way.
それからお店を出てしばらく街中をぶらぶらと歩いた。
最近お互いにどうしているのかだとか、私が瑞希とどう知り合ったのかだとか、あれから私がどうしていたのかだとか。
そういう話をしていても依然としてあの人のことは話題に上らなかった。
私とて、気にならない訳ではない。
ただ、この期に及んで──瑞希と結婚するという話をするに至ってまで、あの人のことを芽実に訊くなんておかしい。
問えば芽実にそう思われるだろうし、私もそう思っていた。
彼女がこうして大学生としてここにいる限り、恐らくは健在なのだろう。そういう推測くらいしかできない。
ただ、そこで私はそのことを喜べばいいのかどうか、それもまた悩ましかった。
そんな逡巡をしているまま、陽は早々に落ちてゆく。
空がうっすらと赤く染まり、お互いに時間を気にし出す頃合い、私たちはあの日別れたコンビニの前まで来ていた。
「私はこっちだから」
「うん」
「それじゃあ、ばいばい」
言うが早いか、芽実は私に背を向けて歩いてゆく。
小風にひらひらと揺れるピンクのワンピースと陽を映す黒髪が眩しかった。
「またな」
その背にそう投げ掛ける。彼女はそれに振り向くことなく軽く手を掲げるだけだった。
作品名:They go on each way. 作家名:高良 七