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紅茶をもう一杯と探偵は口にする

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 そういってどたどたと出ていくのを私は見送り、意知朗さんを見た。
「悲しいですね」
「そうですね。ねぇ陽和子ちゃん」
「はい」
「萌ちゃん、たぶんあると思いますよ」
 一瞬、私は何を言われたのかわからなかった。だが、それがあの女の子の人形であることを思い出した。
「あると、思いますか?」
「たぶん、あの子は一人っ子なんじゃないのかな。お菓子を出したとき、なんの遠慮もなく真っ先に食べていったのは、誰かに奪われることもないし、甘やかされた傾向があると思うんだ。そんな甘やかしている娘の大切な人形を捨てたりはしないと思うんだ」
「じゃあ、どこに? なんで親はいわないんですか?」
「たぶん、あの子が最近は物を大切にしないっていう罰も込めているじゃないかな。あと人形は水につけると髪の毛の色がわかるんだよね? あの子が探しているとき髪の毛をぬらして髪の毛を変えているのかもしれない。その状態で棚なんかの上に置いてしまえば、小さな子は自分よりも下は探すけども、上はまず見ない。そう、人形はずっと上にあるけども、見つからない理由」
「いつ、それ気がつきました?」
「話していてかな。親の躾もあるんなら、明日まで待ったほうがいいと思うんだ。うん。電話をして、あの子がここにきたことをご両親に話しておこうと思うんだ。そろそろ罰も解いてもいい頃だと思うから」
「それがいいですね」
 私は本気でそう思った。
 不意に意知朗さんがちょっと困ったように笑いながらカップを差し出してきた。
「よかったら、紅茶をもう一杯おかわりしたいな」