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どうしてこうなった

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「で、何がどうなったら、そんなことになってるのさ」
「えっとね、それでこないだ駅前で一緒に映画見たでしょ?」
「確かそのテレビ見た翌日でしたっけ」
「そうそう! よく覚えてるねっ」
「先週のことだしね。それぐらいは覚えてるよ」
「わたしもちゃんと覚えてるよ! あの日は3049回目のデートで、しかもしかも! 2.4秒も手をつないでくれた!」
「それは繋いだというよりは引っ張っただけでは……」
「えへへ、嬉しかったなー!」
「…………」
 嬉しそうな満面の笑顔で、尻尾をぱたぱたと全力で振る彼女。
 お願いですから僕の言葉も聞いてください。
「それでそれでね、あの映画館の裏にシアターがあるの知ってる?」
「シアター?」
「うん、かなりボロっちぃんだけどね、あるんだよー。なんて名前の劇場だったかな、忘れちゃったけど」
「なるほど。言われてみれば、見覚えがあるかも」
 駅前の大きな建物が集まった商店街で、その中にあるこじんまりとした映画館を思い浮かべる。確か小さなわき道があったから、そこを行ったところかもしれない。
「キミがお手洗いに行ってる時にちょっと気になって覗いてみたんだけど、そこにお婆さんがいたんだー」
 話の要点をかいつまむと、そのわき道の先に劇場を発見して中を覗いてみたら、占い師みたいな格好のお婆さんが席を構えていたらしい。そこでせっかくだからと恋占いでもと話しかけてみたという。社交性は無駄にある僕の幼馴染だった。
「そしたら何か、お薬くれたの」
 曰く、

『誰もが振り向かずにいられなくなる薬じゃよ』
『ほんとに!? カレも振り向いてくれる!?』
『凝視されること間違いなしじゃ』
『ちょうだい!』

 という流れだったという。そして帰宅してから飲んでみたところ、どういう作用が起こったのか、気がついたら体が犬になっていた幼馴染。犬の体に人の頭は確かに誰もが振り向かざるを得ないけれど、効果ありすぎである。
 こめかみを押さえつつ、悪化した頭痛をこらえる僕。
「とりあえず……僕から言いたいことが、3つ」
「う、ええと……ごめんなさい」
 説教の気配を感じたのかしょんぼりと項垂れる彼女へ向けて、僕は順々に指をゆっくりと立てていく。
「1つ。あの道は人通りもないし、薄暗いから危ないので一人で不用意に歩かないように。
 2つ。知らない人から渡された薬をほいほい飲まないように」
 3つ目、と薬指を立てつつ、彼女へ目を合わせる。
「今日これから、すぐに元に戻る薬を取りにいくよ。僕は犬と結婚する気はありません」
「大好きーーッ!」
 びくびく顔から一転、全力の笑顔を咲かせた幼馴染が飛びついてきた。

 ひとまず前カゴに入れていた荷物を置くため、家に向かう道中。
「そういえば、気になったんですが」
「ん? なぁに?」
 スーパーの袋と入れ替えで幼馴染が前カゴに収まった自転車を止めて、周りを見渡して人目を確認。大丈夫、誰もいない。
 ひょい、と犬ボディを持ち上げて、体の前面を見えるようにする。
「……あ、やっぱりメス犬なんだ」
「あぎゃぱー!」
 顔面を引っかかれた。



 後日談。
 お婆さんに会いに行ったところ、元に戻る薬は有料でした。
作品名:どうしてこうなった 作家名:漆田ヒタオ