MIROKU
月に隠れた星たちは、時間に合わせてくるりくるりと廻っている。
「何人もの人が死にましたわ。でも、何十人もの人が常にいましたから、実際に何人死んだのかはわかりません」
ただ月を見上げ、語る。真実を。
「そして、神の賽子に選ばれた数人のうち、わたくし以外は死にました」
不死者の末路を。
「――完全な不死を得たんじゃなかったのか?」
「……知っていますか、ココロ。不死者の死因は外的要因がほとんどですが、その次に多いのが、精神の死だということを。
どうせ、有限のハードに作られた有限のソフト。無限などという矛盾についていけないのです」
不死者も死ぬ。それは肉体が不死になったことによる、精神の寿命という新たな側面での死。
「もちろん、私もいつ狂うのか分かりませんわ。心を強く保てる今はその心配は無いですが、こんな満月を見ると不安になります。怖くなります」
狂い壊れて人で無くなり、形骸と化した存在に変化する。
それは、不死への欲望の根底を崩しかねない、この世の矛盾だった。
「Lunaticとは、よく言ったものですわね」
ふう、と語り終わったミロクが肩を落した。
「じゃあ、僕は今まで、不死者じゃない、不死を望まない者まで殺してきた、ってことか?」
ココロの体がガタガタと震えていた。
「……ココロ?」
ミロクがココロの顔を覗きこむ。大量の汗を噴出し、ココロの顔は歪んでいた。
「じゃあ、僕が信じてきたことっていうのは、一体なんだったんだ?」
ココロのメモリーが軋み始めた。