幼馴染みが苦手です
「蒼天」と呼ぶにふさわしい気持ちの良い空の下。
戦利品の焼きそばパンと牛乳で昼飯を終えた俺は、昼休みの誰もいない屋上でのんびり手足を伸ばしてくつろいでいた。
耳に聞こえてくるのは、昨日ダウンロードしたばかりのアルバム。それをリピート再生で何度も繰り返す。
仲間と一緒なのも楽しいけど、一人でまったりするのも大好き。
ほどよい満腹感と丁度いい気温で、とろんと瞼が落ちてくる。
ああ、このまま寝ちゃおうかな…
あと少しで眠りに落ちそうな絶妙なタイミングで、イヤフォンから大音量の音楽が鼓膜に突き刺さるように飛び込んできた。
訳がわからないまま飛び起きイヤフォンをもぎ取るように外すと、幼馴染みの楽しそうな笑い声が聞こえてきた。
「あーさーこ」
茶っぽいセミロングの髪。斜めに分けられた前髪の下の目は、愉快そうに細められている。生意気な上向きの鼻と、わざとらしく「にっこり」と微笑んだ口元にはえくぼが出来ていた。
よくわからんが同級生に言わせれば、可愛い分類に入るらしい。
幼馴染みっておいしくない?とか言われるけど、こいつのことを小さい頃から見ている側に言わせれば、そんなの全然おいしくない。むしろ昔の恥やあれやこれと色々握られているので、できれば亜沙子がいない遠い世界で暮らしたいのが本音だ。
「なにするんだよ」
めちゃくちゃ気持ちの良い眠りから無理矢理起こされた俺は、不機嫌全開オーラで起こした張本人を睨みつけた。
しかし亜沙子はそんな俺を気にもとめず、勧めもしないのに勝手に隣に座った。
「だって、いくら声をかけても返事しないから、変だなーと思ったら空也ってばイヤフォン付けてるんだもの」
「だからって、ボリューム上げて起こすか?普通」
「いいじゃん。空也だし」
回答になってないし!
それに誤りもしないその神経はどうかと思うぞ、亜沙子。
亜沙子の相手をするのもアホらしくなってきたので、隣人を無視することにした。
ボリュームを元に戻し耳に再装着しようとした時、素早くイヤフォンを亜沙子に盗られてしまう。
「なに聞いてるの …うわ、似合わない。空也とイメージ会わないですケド!」
「うっせ、返せバカ」
盗られたイヤフォンを引ったくるように奪い返す。
どんな曲を聞こうと俺の勝手じゃないか、何がイメージに会わないだ。好きな音楽を聴いて何が悪い。
「なにその言い方。あんたこそバカじゃん」
「ばーかばーか」
棒セリフ口調で言い返すと、亜沙子はそれこそバカみたいにあっかんべーをして、フェンスの側に歩いていった。
亜沙子が離れて行ったので、安心して音楽鑑賞に集中できる。
俺はイヤフォンをつけ、暖かいコンクリートの上に寝ころんだ。
…おお、良い風。
…
「…おい」
「なによ」
「…パンツ見えてんぞ」
寝ころんだ場所が悪かったのか、亜沙子が立っている場所が悪かったのか。
とにかく膝丸出しのスカート丈が風にあおられ、見たくないモノが見えてしまった状態になっているのは確かだった。
予想としては、真っ赤になって可愛く”きゃあ”とか叫んでスカートの裾を押さえるか、無言で殴りに来るかのどっちかだと思ったのだが。そこは亜沙子だった。
「見たきゃ、見ればー」
……負けた
敗北感一杯で体を起こす。なんだか音楽を聴く気もうせたので、ipodにイヤフォンのコードを巻いてポケットにしまった。
「パンツ見ないの?」
「……おまえ、女としてどうかと思う」
「いいじゃん空也だし。今日は夏らしく、ハイビスカス柄だよ」
「見ねえって!」
わざわざ人の目の前でスカートを捲ろうとするその手を、全力で止めた。
相変わらず、何を考えているのかさっぱり判らない。こいつの頭はパンツ丸見えで遊んでいた幼稚園時代で止まっているに違いない。そうでなければ、俺を心底バカにしているかどっちかだ。
戦利品の焼きそばパンと牛乳で昼飯を終えた俺は、昼休みの誰もいない屋上でのんびり手足を伸ばしてくつろいでいた。
耳に聞こえてくるのは、昨日ダウンロードしたばかりのアルバム。それをリピート再生で何度も繰り返す。
仲間と一緒なのも楽しいけど、一人でまったりするのも大好き。
ほどよい満腹感と丁度いい気温で、とろんと瞼が落ちてくる。
ああ、このまま寝ちゃおうかな…
あと少しで眠りに落ちそうな絶妙なタイミングで、イヤフォンから大音量の音楽が鼓膜に突き刺さるように飛び込んできた。
訳がわからないまま飛び起きイヤフォンをもぎ取るように外すと、幼馴染みの楽しそうな笑い声が聞こえてきた。
「あーさーこ」
茶っぽいセミロングの髪。斜めに分けられた前髪の下の目は、愉快そうに細められている。生意気な上向きの鼻と、わざとらしく「にっこり」と微笑んだ口元にはえくぼが出来ていた。
よくわからんが同級生に言わせれば、可愛い分類に入るらしい。
幼馴染みっておいしくない?とか言われるけど、こいつのことを小さい頃から見ている側に言わせれば、そんなの全然おいしくない。むしろ昔の恥やあれやこれと色々握られているので、できれば亜沙子がいない遠い世界で暮らしたいのが本音だ。
「なにするんだよ」
めちゃくちゃ気持ちの良い眠りから無理矢理起こされた俺は、不機嫌全開オーラで起こした張本人を睨みつけた。
しかし亜沙子はそんな俺を気にもとめず、勧めもしないのに勝手に隣に座った。
「だって、いくら声をかけても返事しないから、変だなーと思ったら空也ってばイヤフォン付けてるんだもの」
「だからって、ボリューム上げて起こすか?普通」
「いいじゃん。空也だし」
回答になってないし!
それに誤りもしないその神経はどうかと思うぞ、亜沙子。
亜沙子の相手をするのもアホらしくなってきたので、隣人を無視することにした。
ボリュームを元に戻し耳に再装着しようとした時、素早くイヤフォンを亜沙子に盗られてしまう。
「なに聞いてるの …うわ、似合わない。空也とイメージ会わないですケド!」
「うっせ、返せバカ」
盗られたイヤフォンを引ったくるように奪い返す。
どんな曲を聞こうと俺の勝手じゃないか、何がイメージに会わないだ。好きな音楽を聴いて何が悪い。
「なにその言い方。あんたこそバカじゃん」
「ばーかばーか」
棒セリフ口調で言い返すと、亜沙子はそれこそバカみたいにあっかんべーをして、フェンスの側に歩いていった。
亜沙子が離れて行ったので、安心して音楽鑑賞に集中できる。
俺はイヤフォンをつけ、暖かいコンクリートの上に寝ころんだ。
…おお、良い風。
…
「…おい」
「なによ」
「…パンツ見えてんぞ」
寝ころんだ場所が悪かったのか、亜沙子が立っている場所が悪かったのか。
とにかく膝丸出しのスカート丈が風にあおられ、見たくないモノが見えてしまった状態になっているのは確かだった。
予想としては、真っ赤になって可愛く”きゃあ”とか叫んでスカートの裾を押さえるか、無言で殴りに来るかのどっちかだと思ったのだが。そこは亜沙子だった。
「見たきゃ、見ればー」
……負けた
敗北感一杯で体を起こす。なんだか音楽を聴く気もうせたので、ipodにイヤフォンのコードを巻いてポケットにしまった。
「パンツ見ないの?」
「……おまえ、女としてどうかと思う」
「いいじゃん空也だし。今日は夏らしく、ハイビスカス柄だよ」
「見ねえって!」
わざわざ人の目の前でスカートを捲ろうとするその手を、全力で止めた。
相変わらず、何を考えているのかさっぱり判らない。こいつの頭はパンツ丸見えで遊んでいた幼稚園時代で止まっているに違いない。そうでなければ、俺を心底バカにしているかどっちかだ。