愛を写す、君を愛す
今日の女はやたらと声がデカイ。
今日の女というのは1つ上の先輩で
学内で1番の清純派で人気だ。
周囲には大学生の彼ひとすじとなっているが
本当は違う。
大学受験もひかえているというのに
週一で僕を誘ってくる。
彼が忙しくて相手をしてくれないからと言うけど
僕はその気持ちがよくわからない。
ま、そんなこという自分も
こうやって性欲処理をさせてもらってるから
お互い様ってやつだけど。
<改ページ>
「あっ、あっ・・・・・・
タクミィィィ好きぃぃぃぃぃ」
この女はイク寸前になると
たいてい「好き」という言葉を発する。
「好き」なのは僕の肉体か僕自身なのか。
もしくはこの行為に対してなのか。
変なことをマジメに考えてしまったせいで
萎えてしまいそうになったが
今までの時間がムダになってしまうので
さっさと終わらせようとする。
と、気がつくと細い手がのびてきて
僕にキスをしようとしてきた。
「センパイ、声がおっきいから我慢してねー」
キスをテキトーにはぐらかして
女の口を手でふさいだ数秒後、
僕はなんとか達することができた。
「じゃぁまたメールするね」
いそいそと制服をととのえて
女はいつの間にか清純なセンパイへと戻っていた。
そして
いつも使われていない教室から
パタパタと音をたてて去っていった。
女の顔はやたらスッキリしていた一方
まるで精気がとられたように僕は動く気がしない。
セックスした後の余韻を男は楽しまないと
よくいわれているけど、僕はそうは思わない。
女のほうが現実主義だし、
自分の都合のいいようにしか男を必要としていないと思う。
女がいなくなった後
まだオスとメスのニオイがする空間で
僕は目を閉じる。
帰ってこのあいだ撮った写真を現像しなくてはと思いつつ
意識が遠くなってゆく。
教室の時計は16時20分。
気がつくと16時45分だった。
結構寝たんじゃないかと思っていたが
時間はそんなに経っていなかった。
校庭からは野球部の野太い声が聞こえてくる。
ウチの高校の野球部は弱小で、大会はたいてい1回戦敗退なのに
皆よくがんばるなぁと感心する。
僕だったらこんな不毛な活動はたえられない。