Happy New Year!
しばらく歩いていると、急に吉野が立ち止まる。当然、連結している俺も止まらなければならない。
「なんだ? どうかしたか?」
「あそこの店って美味しいらしいよッ」
指差す方向を見ると、最近オープンしたステーキ屋があった。
「お前、まさか今食いたいとか言うんじゃないだろうな?」
「ああ、大丈夫。そんなに高くないらしいから」
「そうじゃない。さっき食ったばっかりだろう」
「さっきのは朝ごはん分だもん。お昼分は完全フリー状態だよ」
「それにしたって昼間っからステーキはマズいだろ。本当にデップリ街道まっしぐらだぞ」
「大丈夫だよ。わたしの彼氏はそんなこと気にしないから」
「……そいつは初耳だな」
腕を引っ張られてステーキ屋へと強引に進行方向を変更させられながら、俺は神前で祈った願いを再び心の中で呟く。
(今年もずっと賑やかな日々が続きますように)
作品名:Happy New Year! 作家名:大橋零人