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フリコ妖怪

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 そんなわけで、いつのまにか妖怪がいる生活に慣れてしまっていたのだが、冬の訪れと共に、妖怪は姿を見せなくなった。冷気に弱いというから、冬には冬眠でもするのだろうか。少し寂しく思ったが、妖怪とは本来そういうものだ。突然現れて、突然去っていくものなのである。そう納得してまた前のようにひとりで晩酌をして、いつの間にか寝るという生活を繰り返していると、また、冷蔵庫の中に入れたスルメが机に出しっぱなしになっていることに気付く。なんだ、また来ていたのかと思って冷蔵庫を覗くと、買っておいた雑魚煮がかちんこちんに凍り付いていた。やられた、と思ったが、まあ妖怪との晩酌は楽しかったので、許すことにした。

 あの妖怪は、春になったらまたひょっこりと姿を現すのだろうか。その時はおしおきに凍った雑魚煮を食わせてやろうなどと他愛ないことを考えながら、今日もこたつで杯を煽る。つまみのスルメは、今夜も旨い。




 ところで、ごちゃごちゃになった寝室から、妙な文字がびっしりと書かれた小さな冷蔵庫が見つかったのだが、これはなんだったのだろう?
作品名:フリコ妖怪 作家名:不見湍