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早稲田文芸会
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ストイコビッチのキックフェイント(笠井りょう)

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レガースというのはすねあてのことだ。サッカーは西洋紳士の競技だから、審判の目を巧みに盗みながらボールを奪うふりして相手のすねを蹴ったり、ヘディングで競り負けたふりして相手の足を踏んだりしないと勝てない。お互い相手の裏をかくことばかり考えていて、信じられるのは目に映り頭に浮かんで来るチームメイトの動きだけ。練習通りのパスが通ることなんてめったになくて、ボールを持ったら、いや持つ前に、まずは素早くフィールドを見渡して、どこに誰がいるか、どこのスペースへ向けて動いているか、その子がゴールまでの筋道をどう思い描いているか、を、それとなく察しておく。パスの選択肢が減ってしまわないように、ボールをトラップしてから次の人に渡すまでは、次の一手をなるべく限定しないほうがいい。相手に読まれてしまうからね。できればボールも足元に止めるんじゃなくて、次のリアクションが取りやすいところへあらかじめ転がしておくように。頭でわかっててもこれがすごく難しい。ボールを転がす勢いや方向を少し誤ったり、そもそもトラップし損ねたりすると、すぐに無駄が生まれたり、相手に追いつかれたりする。ノールックでダイレクトスルーパスがいくらでもつながる黄金の中盤擁する82年W杯当時のブラジルA代表ならともかく、日本の片田舎で運動不足解消に趣味と夫との話題作りのためにサッカーしている私たち。油断はいけない、気も抜けない。前線で守備もせずにたらたら休んでられるのは、どこから来たどんな球からでも点が取れる抜群の決定力の持ち主、ニ十年に一度の才能だけだ。