鍋の中の未来都市
翌朝、何か物音が聞こえて目が覚めた。どうやら昨日は泣き疲れて、知らないうちに眠ってしまったらしい。眠たい目をこすりながら台所に行ってみると、昨日の男がいた。
「ああ、起きましたか」
男はエプロンを着け、手には菜箸を持っている。よく見るとガスコンロにはぐつぐつと煮込まれている鍋があった。
「……なにやってんの?」
「236年と5ヶ月後にもまだ鍋料理は残っていましてね。私の得意料理なんです。なのでお詫びといっては何ですが代わりの鍋を振舞おうと思いまして。じゃあ、これができたら帰りますので」
その言葉に昨日さんざん泣いた筈なのにまた涙が出てきた。そして昨日彼にした酷い行為を思い出し、ばつの悪さを感じながらもひとつの提案をする。
「あの……一緒に食べませんか?」
その日、俺に初めての友達ができた。