KNIGHTS~短編集~
背番号のないユニフォーム
高校に入学して、そこそこ名前が知られている野球部に入って、真新しいユニフォームがやっと届いた。それだけでなんだかワクワクして、帰宅してからもずっと見ていたら、いきなり部屋に入ってきた幼馴染にツッコミを入れられる。
「ユニフォームが届いたんだよ」
ほれ、とユニフォームを見せる。するとナツは興味を示したようでこちらに寄ってきた。
「カイも、これからはこのユニフォームを着るんだね」
そう言って、目を細める。
「背番号、何かな?」
ナツの声は僅かに弾んでいて、それが俺を嬉しくさせる。やっぱりこいつは、野球が好きなんだ。
「いつか、2番つけてみせるから」
中学までは手に入れることが出来なかった正捕手の証。高校ではきっと、手に入れてみせる。
人数が少ないから、先輩たちが引退したら自然と手に入る可能性は高いけれど、そんなのじゃなくて。人数なんて関係ない。体格だって、捕手らしくなってみせる。打率や、外野手としてのスキルではなく、捕手として評価されたい。認めてもらいたい。
俺がそう想いをぶつけると、ナツは不満そうな顔をした。
「なら、いつかなんて言わず、今年から2番つけるつもりでいなさいよ!」
そりゃ、片岡先輩は凄い捕手だしカイなんかじゃ敵わないかもだけど。なんて余計な一言が付け加えられるが、そんなのは照れ隠しだって分かりきっているから悪い気はしない。
だけど、そのままというのはなんとなく気に食わなかったので、ナツの頭をぐしゃぐしゃと撫でまわした。
「言われなくても頑張るよ」
まだ背番号の着いていないユニフォーム。
そこには確かに、可能性があった。
必ず、2番を背負って見せる。
だからナツには、スタンドからその背中を見ていて欲しい。1試合でも多く。
そのためにも練習を続けて、強くなって、勝ち続けようと、俺は背番号のないユニフォームに誓った。
作品名:KNIGHTS~短編集~ 作家名:SARA