KNIGHTS~短編集~
クラスメートですね、野口君
「げ…」
近場の高校に合格が決まって、クラスと選択科目の発表と教科書購入をする日。
幼馴染と並んで掲示板を1組から見て自分の名前をさがすと、それはすぐに見つかった。
1組の名簿の1番上には、はっきり【浅井奈津希】と書かれている。
「うわ、1組1番かよナツ」
めんどくさそー、とからかうような声が隣から聞こえてきたので、その声の主を睨み付けてやった。
「カイは何組?」
聞きながら、掲示板を見て幼馴染の名前を探す。
「俺も1組だったよ」
そう言って指差された先を見ると、確かに【野口櫂斗】と書かれていた。
「…げ」
思わず呟くと、ペシッと頭をはたかれる。
「おっまえ、ここは喜ぶとこだろ!」
そりゃ正直な話、同じ中学出身ってカイの他には2人くらいしかいないし、貴重な知り合いが同じクラスにいてくれるのはどこか心強い。だけど、
「学校でもカイと一緒とか、いい加減ウザい」
過保護な幼馴染は何かにつけて口うるさい。同い年なのに、ヤツは私を妹だと勘違いしてるんじゃないだろうか。や、確かに兄妹のように育ってきたけどさ。
諦めるように溜息を吐いて、教科書販売のコーナーに向かって歩き出すと、カイも少し遅れ動き、当たり前のように私の隣に並んだ。
口うるさいのは鬱陶しいけれど、こういうのは嫌いじゃない。
両親が離婚して、お母さんが事故にあって、色々なものを失ったけれど、カイはずっと変わらず隣にいてくれた。
そして今も。
「俺、教科書買ったら野球部に顔出すけど、お前どうする?」
あー、そういやここのところずっと野球部の練習に参加してるよね。
「今日も練習に出るの?」
「や、今日は荷物多いから挨拶だけ。すぐに終わるよ」
「ふーん。じゃあ先に帰る」
「はぁ!? ちょっ、なんだよそれ!」
普通は待っとくだろ! と慌てるカイが妙に笑える。
同じクラスだと、こんな感じで学校でも過ごせるのかな。うん、それは悪くないかも。
「嘘だって。待っとくから早く済ませてよね」
「え、グラウンドには来ねーの?」
……グラウンドに行かせるつもりだったのか。
あんまり行きたくないんだけど。でもきっと逃げられないんだろうな。
「良いよ、グラウンド行く。正捕手の先輩見たいし」
そう言えば、また隣でカイが騒ぎ出す。カイなんか外野手で固定されちゃえ。3年間レフト守っておけば良いよ。
まぁ冗談だけど。頑張ってるの知ってるし。
立派な正捕手になる過程をしっかり見届けてやろうじゃないか。
ずっとずっと、隣で。
作品名:KNIGHTS~短編集~ 作家名:SARA